15日、湖北省武漢市青山区の中交江錦湾小区にあるシェア宝箱で、子ども用のイスを受け取る住民。(武漢=新華社記者/鄧楠)
【新華社北京11月22日】中国の北京市、上海市、湖北省などではこのところ、多くの社区(コミュニティー)で共有スペース「シェア小屋」を設置する取り組みが進んでいる。雨傘や道具箱のシェア、図書コーナー、理髪店など多彩な用途で使用され、そこで遊休物品を生かすことが社区での新たな流行になりつつある。
湖北省武漢市にある複数の小区(居住区)では、それまで使われていなかったスペースに道具入れを設置したり、ミニガーデンを作ったりすることで、住民にメリットのある便利で温かい空間を生み出している。同市青山区紅鋼城街道二街社区にある中交江錦湾小区ではシェア宝箱、シェア道具小屋、シェア理髪小屋、シェアガーデン、シェア図書コーナーという五つシェア空間が大人気となっている。
同社区共産党委員会の蔡晶晶(さい・しょうしょう)書記は「住民たちは家庭で使わない道具をよく持ち寄り、いざという時に使えるようにしている。道具入れにはすでに道具が58点集まった」と語った。
15日、湖北省武漢市青山区の中交江錦湾小区にあるシェア理髪小屋で、高齢者の散髪をする理髪師の張琳さん。(武漢=新華社記者/鄧楠)
10平方メートル余りのシェア理髪小屋は毎週火曜日にオープンする。利用客はいずれも小区に住む80歳以上、または行動が不自由な高齢者で、小区の近くで理髪店を20年以上経営する張琳(ちょう・りん)さんと夫が、社区の奨励を受けながら無料で理髪サービスを提供している。
シェアガーデンでは、使わなくなったタイヤや自転車に色を塗って囲いに用い、スプレーアートが独特の景観を形成している。空いていたデッキには図書コーナーが設置され、住民たちが読まなくなった本を寄贈、壁のQRコードを読み取ると、オーディオブックサービスも利用できる。
15日、湖北省武漢市青山区の中交江錦湾小区にあるシェアガーデンで、柵にペイントを施す住民。(武漢=新華社記者/鄧楠)
シェア小屋は便利で相互支援、実用的、無料といった特色を持っており、多くの街道や社区の住民委員会が統括的に設置の段取りを進めている。
上海市浦東新区の塘橋街道では20余りの小区で「互助通中継所」を設置しており、住民から使わなくなった品を募集し、小区内にシェア小屋を建てている。
同区で最初に「互助通中継所」を始めたのは微南居民区で、同区共産党支部の丁海敏(てい・かいびん)書記によると、小区は7人のボランティアサービスチームを組織して中継所の管理を行い、運営プランや品物の利用規約などの制度づくりを行っているという。中継所は現在すでに20余りの小区に広がっており、住民は小区を出入りする際に品物を借りたり返したりできる。
上海市浦東新区の微南居民区にある「互助通中継所」。(資料写真、上海=新華社配信)
社区が音頭を取って管理する以外にも、住民がニーズに沿って自主的に立ち上げるシェア小屋もある。北京市朝陽区の八里荘西里社区では、おもちゃのシェア小屋が子どもたちに喜ばれている。小屋は社区に住む母親らが自主的に立ち上げたもので、家で使わなくなった児童書やおもちゃなどを小屋に寄贈し、社区の子どもが利用できるようにしている。
シェア小屋の出現により、隣人間の助け合いが多く見られるようになり、日常生活における利便性や温かさも増した。
19日、北京市朝陽区の八里荘西里社区にある、おもちゃのシェア小屋。(北京=新華社記者/孫蕾)
上海社会科学院応用経済研究所の曹禕遐(そう・いか)研究員は、シェア小屋の出現が住民の生活における欲求の一部を満たすとともに、より低炭素で環境に優しい生活を実現し、不用品に新たな役割を与えており、将来の社区ガバナンスに向け、次のような新トレンドを生んでいるとし、①趣味サークルが出現する。上海では一部の社区で関連の試みが始まっている②自発的な共同建設や共同運営、共有というガバナンス形態が一般化する③デジタルガバナンスが社区のきめ細かなガバナンスの基礎となり、デジタル技術や人工知能(AI)技術が社区ガバナンスに「新たな質の生産力」(科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力)をもたらす-の3点を挙げた。
武漢大学社会学院の王徳福(おう・とくふく)副教授は、社区のシェア小屋はリソースの活性化を促し、より多くの人が利益を得ると指摘。社区がシェア小屋を通じてリソースの集積地、ハブとしての効果を発揮することで、人と物がつながり合い、社区の公共事務と融合して住民にサービスを提供し、恩恵をもたらすとの認識を示した。(記者/李卓璠、鄧楠、黄安琪、孫蕾)