左:木製の鳳冠マグネット。
右:AR(拡張現実)によるインタラクティブ機能を持つ金属製鳳冠マグネット。(組み合わせ写真、北京=新華社配信)
【新華社北京11月8日】中国北京市にある国家博物館ではこのところ、同館が収蔵する明代の孝端皇后九竜九鳳冠をモチーフにした冷蔵庫用マグネット「鳳冠マグネット」が静かなブームになっている。販売開始から3カ月半の間に、2種類の鳳冠マグネットは計14万5千個売れた。この20年近くでは同館最大のヒット商品となっており、市民の間では今北京で最も手に入れたい文化クリエーティブ製品の一つとまで呼ばれている。
実は、鳳冠マグネットが特別なケースというわけではない。北京古代建築博物館の天宮藻井マグネットや、杭州博物館(浙江省)の影青釉里紅高足杯マグネット、敦煌研究院(甘粛省)の紙彫灯マグネットなども若者の人気を集めている。
四川省広漢市の三星堆博物館に展示された黄金仮面と、それをモチーフにしたマグネット。(2022年5月16日撮影、広漢=新華社記者/王曦)
自宅にマグネットを100点以上収集しているという郝(かく)さんは「記憶にとどめるためにマグネットを買う。古代人の結縄(けつじょう)みたいなもので、毎回見るたびに何年にどこへ行き、どんな文化財を見たかを思い起こすことができ、当時の感動がよみがえる」と話し、マグネットが貼られた冷蔵庫の前に立つと、まるでどこかの博物館にいるかのような気分が味わえ、歴史や文化の濃密な空気を感じられると振り返る。今、人気の文化財を忠実に再現したマグネットを使って「マイクロ博物館」を作ることが、若者の間で新たな流行になっているという。
文化クリエーティブマグネットの爆発的な人気は、その造形の美しさに加えて、文化財自体が持つ重厚な歴史的蓄積、独特の魅力とも切り離せない。広西チワン族自治区から旅行で北京を訪れた王(おう)さんは、国家博物館で四羊方尊や青銅面具、鳳冠をかたどったマグネット3点を購入。「館内で四羊方尊を見た時は衝撃的で、荘厳さが大いに心を打った。文化財が教科書から突然飛び出してきたような驚きがあった。文化クリエーティブ製品ショップで見つけた時には、すぐに手に取った」と語った。
SNSアプリ「小紅書(RED)」に投稿されたマグネット。(資料写真、北京=新華社配信)
このほか、合理的な価格や携帯性の高さも、数ある文化クリエーティブ製品の中でマグネット人気が突出している大きな要因とされる。旅行に出かけると必ず、訪れた場所や独特な活動を代表するマグネットを数個選ぶという丁当(てい・とう)さん(仮名)は「3年前からマグネットに魅了された。私にとっては美しい思い出が詰まった一種の媒体」とした上で、旅行時にキーチェーンやマグカップといったお土産を買ったこともあるが、「実のところ収納しにくい。その点、マグネットはどこでも売っているし、整理もしやすい」と語った。
中国文物学会文化遺産伝播専業委員会の宋雨晗(そう・うかん)秘書長は文化クリエーティブマグネットについて、消費者の「見てきた歴史」とともに「行ったことのある世界」も刻まれているとし、その人気ぶりは「文化・博物館熱」と「文化観光ブーム」という現象で生じた必然の結果との認識を示した。(記者/楊珏)