天津市内のイオンモール。(8月29日撮影、天津=新華社配信)
【新華社天津10月31日】中国で共同発展が進められている北京、天津、河北の2市1省からなる「京津冀(けいしんき)地域」の2023年のGDPは10兆元(1元=約21円)を超え、名目で13年のほぼ2倍となった。今年1~6月のGDPは5兆1500億元。中国北部における世界クラスの都市群の建設が加速している。
総人口1億人を超える2市1省の共同発展戦略は10年前に正式に提出され、中国北部の重要プロジェクトとなった。15年に打ち出された「京津冀共同発展計画綱要」は、北京を中心とする「世界クラスの都市群」を建設するとの方針を明記している。
日本の代表的なショッピングモール、イオンモール(永旺夢楽城)は10年に天津市に出店。7年で天津中北店など4店舗を市内に設立し、中国本部も天津に置いた。同社の京津冀地域総経理の佐藤規正氏は「中国市場では購買力や品質へのニーズが高まり続けており、わが社も対中投資を継続的に増やしている」と述べ、天津は京津冀都市群の重要な支点で、市場潜在力が極めて大きいと見込む。
京津冀地域の都市間鉄道網で最初に開業した京唐(北京-唐山)都市間鉄道と京浜(北京-天津浜海新区)都市間鉄道。同地域の交通一体化を象徴するプロジェクトとなった。(2022年12月30日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)
世界の先進的都市群の発展にはこれまで、高密度の鉄道交通網が都市を結び付ける基礎的な役割を果たしてきた。京津冀地域でも10年を経て、京張(北京-張家口)高速鉄道、京瀋(北京-瀋陽)高速鉄道、京唐(北京-唐山)都市間鉄道、津興(天津-大興国際空港)都市間鉄道などが運営を開始。同地域の鉄道営業距離は1万1千キロを超え、13年比で30%延びた。高速道路の営業距離も40%延びて1万1千キロに迫っている。
天津市交通運輸委員会の劉道剛(りゅう・どうごう)副主任によると、京津冀地域の主要都市ではすでに1時間から1時間半の交通圏がほぼ形成されている。
天津市内を流れる海河の遊覧船に乗り、巨大観覧車「天津の眼」を背景に記念撮影するネパール人観光客。(8月25日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)
産業面での共同発展も進んでいる。京津冀地域の2市1省はここ数年、産業協力の強化を重点事業の一つとしてきた。①水素エネルギー②バイオ医薬③サイバーセキュリティーと産業インターネット④ハイエンド機器・設備と工作機械⑤新エネルギーとインテリジェント・コネクテッドカー⑥ロボット-の6分野で、産業チェーン、サプライチェーン、イノベーションチェーンのさまざまな要素の融合を促進。産業面での地域協力は外資企業にさらに多くのビジネスチャンスをもたらしている。
ドイツの産業機械メーカー、フレンダーは、グループ最大のギアボックス製造となる弗蘭徳伝動系統を天津に構える。同グループのアンドレアス・エベルツ・グローバル最高経営責任者(CEO)は「中国事業ではすべてのサプライチェーンの現地化を実現した」と表明。中国では整ったサプライヤー体制を構築し、技術、人材、収益の好循環を形成、フレンダーは産業チェーンやサプライチェーンに欠かせない一環になっていると述べた。
天津国際クルーズ船母港で、中国での決済について外国人観光客に案内するスタッフ。(4月7日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)
京津冀地域は産業だけでなく、財政や民生などの分野でも一体化を推進し、地元の住民や外国人に利便性を提供している。北京大興国際空港の出入境検査部門の発表によると、今年の1~8月、許可された144時間以内のトランジット入境者数は昨年同期の10倍に増え、英国人や日本人など2万人を超える外国人がビザ免除措置を受けた。
南開大学経済・社会発展研究院の李蘭冰(り・らんひょう)副院長は、京津冀地域が形成した「伝統産業と新興産業が同時に発展し、イノベーションチェーンと産業チェーンが融合を加速する」という発展の道は中国の都市群建設にとって参考モデルになると指摘。さらに「世界クラスの都市群の形成は周辺国家や地域により大きな市場とチャンスをもたらす」との見方を示した。(記者/郭方達、劉惟真)