【新華社鄭州10月28日】中国の鄭州大学(河南省鄭州市)歴史文化遺産保護研究センターは、前漢時代の諸侯墓、海昏(かいこん)侯劉賀墓(江西省南昌市)出土の蒸留器が酒の蒸留機能を持つことを同センターの研究チームが実証したと発表した。複製品を用いた実験で確認し、中国で蒸留酒の生成が可能になった時期を千年さかのぼらせた。
同センターの韓国河(かん・こくが)主任は今回の発見について、明代の医薬学者、李時珍(り・じちん)の「本草綱目(ほんぞうこうもく)」にある「焼酒(蒸留酒)は古法ではなく、元の時代に始まる」という記述に基づく通説を正し、中国の酒醸造技術の歴史を書き換えた」と述べた。
海昏侯劉賀墓出土の蒸留器。(鄭州=新華社配信)
劉賀墓の酒器庫から出土した青銅製蒸留器は、天鍋(凝縮器)、筒形器、釜の3部分からなるが、使用法や蒸留対象については学界で見解が分かれていた。
同センターの姚智輝(よう・ちき)教授は「蒸留器は蒸留酒のほか、辰砂(しんしゃ)や花露(精油)の蒸留・精製にも使用できる」とした上で、今回複製した器物は形状や性質、原料の反応条件などから辰砂や花露の可能性を排除できると指摘。「出土場所や残留物、劉賀の身分、器物の構造、複製品を使った異なる原料による実験データを総合的に分析し、初期の酒蒸留装置だと確認した」と述べた。
研究チームは技術分析を通じ、蒸留器の天鍋は取っ手のある方を下にして逆さまに置くのが正しい使い方だと確認。2分の1スケールの模型で固体のもろみ、液体のビールと黄酒(紹興酒に代表される米原料の醸造酒)などを原料として蒸留実験を行った。
研究チームが実証した天鍋を逆さまに入れた状態の蒸留器。(鄭州=新華社配信)
研究チームが実験のために作った蒸留器の模型。(鄭州=新華社配信)
姚氏は実験結果について「すのこを使った蒸留も釜の中での蒸留も現代の意味での蒸留酒を作ることができた。蒸留効率はいずれも70%以上だった」と説明。劉賀墓出土の蒸留器は大きさや構造、使用方法、操作の連続性のいずれもが蒸留酒生産のニーズに見合っており、蒸留効率や生産量だけでなく、口当たりや度数にも気を配っていたと語った。
今回の研究成果は、河南博物院の定期刊行物「中原文物」に掲載された。(記者/袁月明)