貴州省の「桃源郷」を撮り続ける日本人カメラマン

新華社 | 2024-10-21 15:38:04

岜沙村のミャオ族集落で、村民の新しい生活の様子を撮影する竹田武史さん。（資料写真、岜沙＝新華社配信）

　【新華社貴陽１０月２１日】中国貴州省貴陽市で７月３０日から８月１１日まで国際写真展が開催され、京都出身の日本人カメラマン竹田武史さんが招待作家として招かれた。竹田さんは「最後の射撃手（ガンマン）集落」と呼ばれる同省岜沙（はさ、バーシャ）村を１０年にわたって撮り続けてきた。

　同村は黔東南（けんとうなん）ミャオ族トン族自治州従江県にあるミャオ族の人々が代々暮らす集落で、村の男性は腰刀を身に着け、火縄銃をかついでいる。

　「岜沙」はミャオ族の言葉で「草木が生い茂る場所」を意味する。村の伝統的な高床式の住居や穀物倉庫などが青々とした葉を付けた古木と引き立て合い、素朴でありながら美しい風景が広がる。村民は今なお鎌で髪をそり、古木を祭り、段々畑で農耕に励むといった昔ながらの習慣や風習を守っている。

岜沙村のミャオ族集落に戻ってきた竹田武史さん（手前）。（資料写真、岜沙＝新華社配信）

　竹田さんは２０００年、貴州大学に留学した。中国西南部に暮らす少数民族の生活や文化は日本人と似ている部分が多いと聞き「自分の目で確かめてみよう」と、０１年に初めて岜沙村を訪れた。古建築や伝統衣装、神秘的な習俗は、あたかも外界から隔絶された桃源郷のようで、大きな衝撃を受けた竹田さんはその日から村の様子をカメラで記録することを決意した。以来１０年間、断続的に村を訪れ、村内のほぼ全ての集落を回って四季折々の感動的な瞬間をカメラに収めてきた。

　竹田さんはこの１０年間の成果を１冊の書籍にまとめた。１５年に日本で刊行されたノンフィクション「桃源郷の記－中国バーシャ村の人々との１０年」は岜沙村という桃源郷の存在と異なる文化的背景を持つ人々がより良い生活を求める姿を世界に知らしめた。

竹田さんの作品は単にプロフェッショナルな美しい写真というだけでなく、ミャオ族文化を広め保護するという役割も持っている。

岜沙村のミャオ族集落で、顔なじみの村民と歓談する竹田武史さん（右）。（資料写真、岜沙＝新華社配信）

　竹田さんは今年の夏、写真展出席に合わせて再び同村を訪問した。村民へのプレゼントとして、以前撮影した写真を村で展示した。

　「あの時撮影した子どもがもう結婚している。以前は毎日井戸水で洗濯をし、髪を洗い、汲んだ水を運ばなければいけなかったのに、今では水道が通っている」。展示した写真と、写真を見に来たお年寄りや子どもたちを見て、竹田さんは時の流れの速さを感じずにはいられなかった。

　初めて岜沙村を訪れてから２０年余り、幾度となく同村を訪れてきた竹田さんは、ミャオ族集落の発展の証人とも言える。「初めて来た時には貴陽から車で２日かかったが、今は高速鉄道に乗れば２時間足らずで着いてしまう。集落内の背が低く小さな木造住宅も、広々とした瓦ぶき屋根の家に変わった」と語る。

岜沙村のミャオ族集落で、村民の新しい生活の様子を撮影する竹田武史さん。（資料写真、岜沙＝新華社配信）

　同村を訪問している間、竹田さんの表情から笑顔が消えることはなく、顔なじみの村民と流ちょうな中国語であいさつを交わす。観光客が来ると集落の入り口で出迎え、民族楽器の蘆笙（ろしょう）に合わせて舞う民族舞踊「蘆笙舞」を披露し、農家楽（アグリツーリズム）施設でもてなす村民たちの様子を、精力的にカメラで記録した。

　竹田さんは「ミャオ族の集落が観光によって発展するのは素晴らしいことだと思う。自分の村で商売をして収入を得つつ、畑仕事をして自給自足ができる。村民たちの今の生活はとても理想的だ」と語った。

　同村の交通や家屋の発展ぶりを目にしてきた一方で、人々の素朴さや自然の美しさは失われておらず、自身の疲れた心を癒やせる場所だとも話す竹田さん。今後も貴州省の発展や、変化に注目していくという。（記者／劉勤兵）