河北省承徳市の高齢者ケアセンターで食事をする高齢者。(7月1日撮影、承徳=新華社記者/金良快)
【新華社北京10月21日】中国では、高齢者への商品・サービスの提供、および高齢準備期の一連の経済活動を指す「シルバー経済」に関する政策の発表が相次ぎ、企業の参入も加速するにつれて、市場の新たな需要が引き出され、シルバー経済が急成長段階を迎えている。国務院はこのほど発表した「サービス消費の質の高い発展促進に関する意見」で、シルバー経済の発展に力を入れ、スマート製品や情報システムなどの技術を活用した「スマート・ヘルスケア・高齢者産業」の発展促進を目指すとした。
市場調査会社の艾媒諮詢(iiメディアリサーチ)によると、中国の高齢者産業の市場規模は2023年が前年比16・5%増の12兆元(1元=約21円)だったが、35年には30兆元程度に膨らみ、同年の国内総生産(GDP)の約10%を占める見通しという。中国のシルバー経済は、加速度的な発展段階にある。
中国のシンクタンク、盤古智庫(パンゴール)傘下の老齢社会研究院の李佳(り・か)副院長は、「高齢者産業の市場規模の拡大は、シルバー経済の大きな成長性を示すだけでなく、需要サイドのサービス・製品に対する差し迫ったニーズも反映している」と指摘。シルバー経済の発展が国民生活にかかわり、産業の発展にも重要なチャンスであるとの認識を示した。
供給サイドを見ると、シルバー経済の関連企業数が増えている。企業情報サイト「企査査」のデータによると、関連企業の登録数はここ10年、毎年増え続け、現時点で48万3千社に上り、主に高齢者向けのサービス、用品、医療・ヘルスケア、旅行などを手掛けている。
また、ビッグデータやクラウドコンピューティング、人工知能(AI)などの技術を活用した装着型ロボット「アシストスーツ」、スマート対話機能を搭載した「高齢者向けスマートフォン」、「管理人」タイプの寄り添いロボットなど、さまざまなスマート製品も次々と登場している。
雲南省昆明市の海埂大壩でユリカモメに餌をやる年配の観光客。(昆明=新華社配信/劉元嵩)
8月に北京で開催された2024年世界ロボット大会では、森麗康科技(北京)が高齢者向け寄り添いロボット「小麗」を出展し、スマート介護の未来を示した。高雅(こう・が)副総経理によると、「小麗」は国内最高性能のチップ、高齢者に特化したヒューマン・コンピューター・インタラクション(人とコンピューターの相互作用)システムとマルチセンサーフュージョン(MSF、複数のセンサーから得た情報を統合・処理する)アルゴリズムを搭載。高い「運動性能」、温かい「音声体験」、豊かな「機能設定」を備え、まるで執事のように高齢者に付き添えるという。同氏は「現在の高齢者はスマート化、デジタル化された新技術に高い関心を持っている。生活する上での便利な情報を音声でタイムリーに得られるだけでなく、社会とのつながりを通じて知見をさらに高めることも可能だ」と紹介した。
シルバー経済の「スマート化」が進むと同時に、シニア層の質の高い製品やサービスに対する需要も高まりつつある。李氏は、新しい中高年は生活の質(QOL)と社会との関わりを重視し、自らの興味や趣味のためにお金を使う傾向にあり、シルバー経済に新たな発展チャンスをもたらしていると指摘する。IT大手騰訊控股(テンセント)の傘下で、マーケティング情報を提供する騰訊営銷洞察(TMI)などが共同で発表した「24年中高年の趣味・教育カリキュラムマーケティングガイドライン」によると、中高年の趣味・教育市場の規模は急速に拡大しており、利用者の77・0%が学習を継続する意向があるという。成人学習サービスを手掛ける北京量子之歌科技(クオンタシング)の施広強(し・こうきょう)執行総裁は、高齢化が進むにつれて、シニア層の多角的でハイレベルなニーズが産業のより広く深い発展を推進するはずだとの見方を示した。