北京マラソンを完走し、国家体育場「鳥の巣」前で完走記念メダルを見せる金峻范さん。(2023年10月撮影、北京=新華社配信)
【新華社北京9月11日】今年の夏の初め、韓国人ユーチューバーの金峻范(キム・ジュンハン)さんは、電動アシスト人力車の後ろに乗って車夫の説明を聞きながら中国北京市の胡同(フートン、伝統的な路地)を巡り、見聞きしたものを動画に収めた。
北京在住歴10年以上の金さんは、ディープな北京を感じるなら旧市街や北京中軸線を訪れるべきだと考えている。
旧市街を南北に貫く北京中軸線は、今年7月に開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第46回世界遺産委員会で「北京中軸線-中国の首都の理想的秩序を示す建築物群」として世界遺産リストへの登録が決まった。
13世紀に建設が始まり、16世紀に完成し、その後も整備が続き今に至る。15の遺産構成要素から成り、旧市街全体の都市計画の骨格となる建築群と遺跡が組み合わさり、遺産の面積は500ヘクタール以上に達する。4千ヘクタール以上のバッファーゾーン(緩衝地帯)には、歴史的な水路や道路、街区、景観視廊(街中の特定の場所を起点として、街並みに向かって一定の方向を見た時に形成される景観)など多くの遺産環境要素が含まれ、その中に点在する胡同は重要な構成要素となっている。
金さんは2023年、北京マラソンと北京ハーフマラソンを完走し、記念メダルを獲得した。レース中、繁華な北京中心部でも、古い建築物が大切に保護され、必要に応じて修繕されていることを発見した。
北京マラソンの完走記念メダルは、天安門や天壇など北京中軸線のランドマークがデザインされている。開閉構造にもなっており、「城門が開き、未来を迎える」という素晴らしい意味が込められている。
北京マラソンの完走者に授与される記念メダルを見せる金峻范さん。(2023年10月撮影、北京=新華社配信)
北京中軸線の15の遺産構成要素は、宮中庭園建築、皇室祭祀建築、古代都市管理施設、国家儀礼・公共建築、中央道路遺構の5種類の歴史的遺構を含む。
ここ数年、北京中軸線の世界遺産登録に向けた保護や街区の刷新が進み、多くの裏通りや小道、河川、湖沼が整備され、幾つもの文化財建造物の明け渡し、修繕、活用が行われた。生活環境も改善され、北京中軸線の歴史文化遺産は新たな魅力を放つようになった。
金さんは旧市街を撮影しながら、北京を南北に貫くだけでなく過去と現代もつなぐ北京中軸線は、北京の歴史的、文化的根底にあるものを守りながら、ますます「都市化」していると感じている。その一つの例として「胡同や周辺の景観を守るため高層建築の高さを制限していると胡同に住んでいる人から聞いたことがある」と話した。
胡同の屋上から周囲を見渡すと、青灰色の屋根が広がり、遮るものもなく確かに美しい。暇な時は、什刹海(じゅうさつかい)の岸辺にある人気のカフェを友人と訪れ、古風な建物の中で雑談をしながら外の景色を楽しんでいるという金さんは「北京中軸線の風景は季節ごとに違っていて、どれも美しい」と語った。
什刹海でそりを楽しむ金峻范さん。(2023年撮影、北京=新華社配信)
金さんは、豆汁(緑豆の絞り汁を発酵させたもの)、焦圈(揚げドーナツ)、杏仁茶(アーモンドティー)、奶糕(米の粉や砂糖で作る食品)、銅鍋涮肉(銅製の鍋で食べる羊肉のしゃぶしゃぶ)など、北京で伝統的に親しまれてきた美食もアップデートされていると感じており「今では豆汁味のアイスさえある」と紹介した。
金さんはここ数年、中国各地を巡りながらあることに気が付いた。北京だけでなく開封(河南省)や西安(陝西省)などにも明確な中軸線があり、古代の日本や韓国の都市構造にも影響を与えていたことだ。
実際、中国の伝統的な都城中軸線の形成と発展の歴史は悠久で、紀元前の先秦時代には既に宮殿建築群が南北方向の基準線を中心に計画的に配置されていた。その後、基準線は次第に広がり、都市計画を効果的に管理する役割を果たすようになった。北京中軸線は、中国の伝統的な都城中軸線が成熟段階まで発展したことを示す手本と言える。
北京中軸線は現在、北は燕山山脈、南は北京大興国際空港まで延びており、北京の発展と変遷を目の当たりにしてきた。「中国はますます開放され、国家体育場『鳥の巣』や国家水泳センター『水立方』(ウオーターキューブ)、北京大興国際空港に多くの外国人が訪れている」と金さんは話し、「中華文化はあらゆるものを受け入れ、異なるものを包み込む開放的な心を持ち合わせており、北京中軸線はその良い例だ」と評価した。(記者/羅鑫)