中国進出30年、ハリウッド映画はなぜ冷え込んだか

中国進出30年、ハリウッド映画はなぜ冷え込んだか

新華社 | 2024-08-29 10:06:08

   【新華社ロサンゼルス8月29日】米国映画はなぜ中国でもてはやされなくなったのか。ハリウッドは中国市場で魅力を失いつつあるのだろうか。このテーマは以前から、多くの米メディアや専門家が頻繁に取り上げ議論するトピックになってきた。

   1994年に「逃亡者」が米国映画として初めて中国で公開され、中国の観客と低迷していた中国映画界に衝撃を与え、中国市場におけるハリウッド映画の華やかな一時代の幕を切って落とした。その後長年にわたり、「トゥルーライズ」「タイタニック」「トランスフォーマー」など多くのハリウッド映画が、中国映画の年間興行ランキングの半ばを占めることが続いた。1作品で数億元(1元=約20円)から十数億元の興行収入を稼ぎ出すこともあり、中国はハリウッドにとって最大の海外市場となった。2019年、「アベンジャーズ/エンドゲーム」の中国での興行収入はハリウッド映画として過去最高となる42億元余りを記録した。

   しかし23年に入ると、中国という世界第2位の映画市場で、自らの勢いが想像を超えるスピードで衰えていることにハリウッドは驚愕(きょうがく)した。同年の中国映画興行収入トップ10にハリウッド映画は1本も入らなかったのだ。米メディアの報道によると、中国の興行収入に占めるハリウッド映画のシェアは23年には約12%にまで低下した。今年これまでの興行収入トップ10では、わずかに「ゴジラⅹコング 新たなる帝国」が8位に入っているだけだ。

   中国市場に進出して30年、隆盛を極めたかつての華やぎは過去のものとなってしまった。米メディアや専門家は、ここ数年のハリウッドは革新や進取の志向に欠け、観客が作品を退屈に感じていることが重要な一因として挙げている。

   ハリウッド映画は長年にわたり、様式化したマトリョーシカのようなIP(知的財産)開発に夢中になり、革新的な活力と想像力を備えたオリジナル映画不足が深刻で、米国内でも警鐘を鳴らす意見が多い。

   23年に中国で公開されたハリウッド映画のうち、興行収入ランキング最高位は「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」の12位で、そのほか「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」「トランスフォーマー/ビースト覚醒」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」などが興行収入のトップ30入りした。今年は「ゴジラⅹコング 新たなる帝国」「デッドプール3」「怪盗グルーのミニオン超変身」などが中国で公開されているが、これらの作品はおおむね続編かスピンオフの類いで、観客に新鮮さを感じさせ彼らを夢中にするのは難しい。

   ハリウッド映画の魅力が衰えたもう一つの重要な理由は、中国本土の映画産業の急速な発展がもたらした競争に直面していることにある。

   1994年の「逃亡者」に触発された「ナマズ効果(競争が緩やかな環境に強敵を投入することで弱者が強くなる効果)」が、中国映画に自助努力と自己改革を強い、映画産業化の急速な発展の道を歩ませたとすれば、中国映画産業は30年の蓄積を経て、ついに蓄えた力が発揮される時期を迎えている。映画の内容や制作水準で追い上げただけでなく、複数の映画ジャンルで大きな進歩を遂げた。ここ数年、アニメ、アクション、サスペンス、SFなど、さまざまなテーマの映画が公開され、「ナタ~魔童降臨~」「流転の地球」「オペレーション:レッド・シー」「YOLO 百元の恋」など良質な国産映画の興行的大成功につながっている。

   米国の映画調査・コンサルティング機関Artisan Gatewayの責任者、ランス・パウ氏は、大好評の中国本土映画の多くは実話や一般の人々の生活に基づいており、現実の生活に近く、観客の共感を呼びやすいと指摘した。同氏は、中国で最近、勢いに乗っている犯罪・サスペンス映画は、予測不可能で巧妙なストーリー展開という特徴があり、それが観客を映画館へ呼び込んでいると分析。これと比べハリウッドの続編映画の多くは、最初から最後まで予測可能なものとなってしまったという。

   米国の中国映画研究者で、南カリフォルニア大学教授のスタンリー・ローゼン氏はメディアに対し、中国映画とハリウッド映画の差はますます縮まりつつあり、中国映画界はまずハリウッドから学び、中国市場における競争でハリウッドを打ち負かしたと語った。

   加えて、中国映画の発展と成長は、自国の文化と価値観に対する中国の観客の肯定的評価の表れでもある。米国の「ナショナル・レビュー」誌が言うように、中国の映画産業が国内市場の需要に応えられるだけの力をつけるにつれ、文化の違いがより重要な影響力を発揮するようになってきた。

   一部の米国メディアは色眼鏡とダブルスタンダード(二重基準)で、中国のいわゆる「ナショナリズム」や「愛国主義」的雰囲気を非難することに慣れている。しかし一方で、ハリウッドが大きな利益をもたらす中国市場を失いつつあることに無力感を覚えながらも、中国映画産業が国内の観客の共感を呼ぶ質の高い映画をより多く送り出していることも認めざるを得ない。

   米メディアは、中国はハリウッドにとって今後も手放し難い重要な海外市場であり続けるが、ハリウッドが中国市場で「独り勝ち」する状況の再来は考えにくいとして、ハリウッドはこの市場の激しい競争に向き合うため、心理状態と戦略を調整しなくてはならないだろうと指摘した。(記者/高山)

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