中国ゲームの台頭「未来編」 異業界融合が映し出す将来

中国ゲームの台頭「未来編」 異業界融合が映し出す将来

新華社 | 2024-08-25 09:33:33

波克医療科技(上海)が開発した子ども弱視患者向けの医療機器「快楽視界星球・視覚訓練システム」。(上海=新華社配信)

   【新華社上海8月25日】娯楽の一形態であるゲームは絵画や音楽、アニメーションなど多様な芸術の集大成であり「第九の芸術」とも呼ばれる。同時に情報技術の一つでもあり、新たな技術、応用の最良の「試験田」となり、デジタルとリアルの融合、分野横断型の応用を推し進めている。

   規模で見れば中国は既に世界最大のゲーム市場であり、「稼ぐ力」に世界が注目している。一方で将来に目を向けると、ゲームに新たな要素を加える「ゲーム+(プラス)」がホットな話題となり、多くの産業と融合する革新的試みが人々のゲーム業界に対する認識を覆しつつある。

   多くの親にとって、ゲームが子どもの弱視を治せるなど想像もつかないだろう。中国ゲーム大手、波克科技(BOKE Technology)傘下でデジタル医療機器を開発する波克医療科技(上海)の「快楽視界星球・視覚訓練システム」は2022年4月、ゲーム業界が開発した初のデジタル医療機器として国家薬品監督管理局の第2類医療機器登録証を取得。既に200以上の医療機関で利用されている。

   同社の陳航(ちん・こう)副総経理は「ゲーム内の攻撃警告やカットシーンにハイコントラストのモノクロラスター(白黒のピクセルを並べた画像)の刺激を用いて視覚中枢細胞の発達を促している。弾丸や宝石など小さな目標物に意識的に目を向けることで視力訓練の効果が得られる」と説明。実証済みの弱視治療の核心的原理を応用しつつもアニメの画風とゲームの要素を取り入れており、大部分の子ども患者が毎日自主的にトレーニングを続けることができると語った。

   同様の試みは他にもある。同社が開発したスマートフォンアプリ「定製式鏈接記憶」(仮訳:カスタマイズ連想記憶法)は老年性認知症の予防と検査、「育夢森林」(仮訳:森で夢を育む)は妊娠中の健康管理、「NeckGo」は頸椎の健康維持に役立つ。ゲーム化されたソフトにより、現在のリハビリや健康管理の手段は充実し、使いやすく、継続しやすくなっている。

   最先端技術を探求し、新たな試みに挑戦してきたゲーム業界にとって、医療との業界の垣根を越えた融合は活力であり、ウィンウィンでもある。オープンワールドRPG「原神」など世界的なヒット作を生み出した上海米哈游網絡科技(miHoYo)は、上海瑞金医院と共同でラボを設立。難治性うつ病のブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を使った神経調節治療の臨床研究に取り組んでいる。このような提携は、現在の医療技術が抱える難題に解決の可能性をもたらすだけでなく、ゲーム分野にBMI技術実用化の機会を提供し、より没入感のあるゲームの開発につながる。

Unityが上海で開いた開発者カンファレンス「Unite上海」。(7月撮影、上海=新華社配信)

   かつてはSF映画でしか見られなかった光景も現実になりつつある。IT大手の騰訊控股(テンセント)は自社のゲームエンジンを搭載した自動運転シミュレーションソフト「TAD Sim」をリリース。実車の全てのモジュールの評価をクローズドループシミュレーションで行うことで開発コストを大幅に削減するとともに開発期間も短縮した。世界で高いシェアを持つゲーム開発ツール「Unity」を手がける米ユニティ・テクノロジーズは、自社の技術を生かして自動運転車両のトレーニングとシミュレーションに適した複雑な環境、シナリオを簡単に作成できるオープンプラットフォームを構築した。

   ゲーム産業はさまざまな分野と連携を進めつつ、産業チェーン全体の統合も進め、エコシステムを構築してイノベーションと発展を続けている。中国のゲームIP(知的財産)関連製品市場の規模は2023年に40億6千万元(1元=約20円)となり、製品は100種類を超えた。上海市は「世界のeスポーツの都」を目指した整備を加速。中国のeスポーツ大会の4割が開かれる同市は全国の大会収益の45%、クラブ収入の54%を生み出し、いずれも全国首位になるなど比較的成熟し、整ったeスポーツ産業エコシステムを形成している。同市で毎年開かれるゲーム見本市「チャイナジョイ」(中国国際デジタルインタラクティブエンターテインメント展覧会)は既に20年の歴史を持ち、当初は2万平方メートルだった展示面積も今年は13万平方メートルとなり、31カ国・地域から600社が集まった。

7月31日、中国音数協遊戯博物館で、展示品の任天堂ゲーム機「ゲームボーイ」をテストするスタッフ。(上海=新華社記者/張夢潔)

   市場の拡大や科学技術の進歩、認識の変化に伴い、中国のゲーム産業は内包と外延を拡大し続け、より多くの社会的価値を創出している。上海市徐匯(じょかい)区の漕河涇(そうがけい)開発区では国内最大のゲーム博物館、中国音数協遊戯博物館が8月末にオープンする。博物館の設立は業界の成熟度を示す重要な指標とされ、上海のゲーム産業が最も集積する漕河涇には、miHoYoや上海莉莉絲網絡科技(Lilith Games)、鷹角網絡(Hypergryph)、上海沐瞳科技(Moonton)、上海悠星網絡科技(YOSTAR)、上海蛮啾網絡科技(MANJUU)、遊族網絡(YOOZOO)など台頭著しい企業が集まる。遠くない将来には、日本の秋葉原のように国内さらには世界のアニメ・ゲームファンが訪れる「聖地」になるかもしれない。(記者/張夢潔、程思琪)

本ウェブサイトに関するご意見、ご提案等が

ありましたら xinhuanetjp@126.com までご

連絡ください。