上海莉莉絲遊戲(リリスゲームズ)が今年発表したファンタジーRPG「AFK:ジャーニー」の宣伝画像。(資料写真、上海=新華社配信)
【新華社上海8月23日】「中国人が朝食に食べるワンタンとは」「錦旗を贈るとはどういう意味」「あんな大きな凧(たこ)をどうやって揚げるの」。中国の「乙女ゲーム」(女性向け恋愛ゲーム)の新作「恋と深空」が世界でリリースされると、海外のSNSではこうした質問が寄せられ、熱心に議論された。
中国のゲームメーカー上海叠紙遊戯(Papergames)が開発した「恋と深空」は今年1月に公開されると、配信初日に日本や米国、カナダ、オーストラリアなど多くの国・地域のアップル「App Store」で無料アプリランキングの1位を獲得。配信3日後には全世界でダウンロード数が1千万回を超えた。特に日本では配信直後に1日あたりの収益が10万ドル(1ドル=約146円)を超え、日本国内の同ジャンルのゲームを大きく上回った。日本では今でも同ゲームの新しいコンテンツやイベントがX(旧ツイッター)のトレンドワードにランキングしている。
上海叠紙遊戯(Papergames)が開発した乙女ゲーム「恋と深空」の宣伝画像。(資料写真、上海=新華社配信)
海外市場で人気の高い中国ゲームの多くには言語表現や音楽、美術などに中国文化の要素が多く盛り込まれ、世界にも受け入れられている。上海鷹角網絡科技(Hypergryph)が開発した「明日方舟(アークナイツ)」は世界で「舟学家(アークロジスト)」と呼ばれる独自のコミュニティ文化を形成。日本のユーザーがゲームに出てくる中国の文学や地理、宗教、礼儀などを解説した同人誌「炎国考略記」は10万字を超え、国内外のプレーヤーの間で熱い議論を呼んでいる。
異文化理解もゲームのストーリー、アニメーションとの結合、現代のプレーヤーの審美観や興味に合わせた改変により敷居が低くなった。例えば、中国で無形文化遺に指定される伝統仮面舞踊「儺舞(なぶ)」は、上海米哈游網絡科技(miHoYo)のオープンワールドRPG「原神」における「靖妖儺舞」の描写で海外の人々に知られるようになった。また「原神」が世界で人気を得た要因の一例にゲーム挿入歌の「神女劈観・喚情(しんにょへきかん・かんじょう)」があり、中国伝統演劇の舞踊と流行音楽の要素を組み合わせることで全世界での再生回数1億5千万回という驚異的な記録を残した。
上海叠紙遊戯(Papergames)が開発した乙女ゲーム「恋と深空」の宣伝画像。(資料写真、上海=新華社配信)
ゲーム産業は文化産業であり、デジタル経済の一部分でもある。優れたコンテンツと創造性は最先端のテクノロジーを用いて実現する必要がある。従来の国産乙女ゲームの2Dグラフィックに対し「恋と深空」は3Dモデリングを最大の売りにしているが、これはゲーム制作の難易度が飛躍的に高まったことを意味し、キャラクターの容姿や動き、風格、服装の精度は度重なる調整を経て大きく向上した。典型的な例の一つに、キャラクターがプレーヤーと一緒に運動などをしてくれる「付き添いシステム」があり、プレーヤーはゲーム中、付き添ってくれる男性キャラクターの動きを360度の視点で観察できる。海外のSNSや動画サイトでは、多くのプレーヤーがキャラクターのスムーズな動きやリアルな汗の描写など「3Dの偉大さ」を率直に評価している。
中国の新興ゲーム会社は独自開発を重視している。miHoYoや上海沐瞳科技(Moonton)はいずれも研究開発職員が全社員の7割前後を占め、典型的な科学技術型ゲーム企業となっている。中国の多くのゲーム会社は現在も5Gやクラウドゲーム、メタバースなど新興技術分野に積極的に進出し、商業化を実現している。
上海叠紙遊戯(Papergames)が開発したゲーム「恋と深空」のプレイ解説画像。(資料写真、上海=新華社配信)
米調査会社センサータワーのデータによると、中国のゲームメーカーは今年5月時点で世界のモバイルゲームパブリッシャー売上高のトップ100に40社がランクインし、総売上高は21億1千万ドルと業界全体の39・7%を占めた。モバイルゲームはITと文化・芸術が融合する分野で中国のソフトパワーを示しており、中国のゲーム企業をより大きなグローバル市場へ向かわせている。(記者/程思琪、張夢潔)
上海鷹角網絡科技(Hypergryph)が開発したリアルタイム戦略RPG「明日方舟(アークナイツ)」の宣伝画像。(資料写真、上海=新華社配信)
上海鷹角網絡科技(Hypergryph)が開発したリアルタイム戦略RPG「明日方舟(アークナイツ)」の宣伝画像。(資料写真、上海=新華社配信)
SNSで中国モバイルゲームの芸術性の高さを評価する日本のプレーヤー。(上海=新華社配信)