中国最大のゲーム見本市「チャイナジョイ2024」でユービーアイソフトが設けたステージ。(資料写真、上海=新華社配信)
【新華社上海8月23日】パリ五輪開会式の覆面聖火ランナーの神秘的な姿は、フランスのゲーム開発大手ユービーアイソフトの人気アクションゲーム「アサシンクリード」のキャラクターが元になっている。同社は1996年、中国上海市にゲーム開発スタジオを開設。以来28年間、「アサシンクリード」のほか「ファークライ」「ジャストダンス」など同社のヒット商品に上海スタジオも技術開発で関わってきた。
ユービーアイソフト上海スタジオの楊志宏(よう・しこう)総経理は「われわれは最も早い時期に中国に進出した海外ゲームメーカーだ」と述べ、中国市場により寄り添い、ユーザーのニーズを理解できたのもそのためだと説明した。「世界の大手ゲーム会社にとって中国での布石拡大は必須であり、上海の重要性は言うまでもない」とも指摘した。
上海は中国で最も開放され、発展した国際都市の一つで、中国と西洋のゲームが合流する重要な場所、海外ゲームが中国市場を開拓し、中国ゲームが海外に進出する要の地でもある。ユービーアイソフトは28年にわたり上海ゲーム業界の発展を見届け、自らも参加し、同社が拠点を置く徐匯(じょかい)区ではゲーム開発会社と専門の人材が幾何級数的に増えた。2021年末には上海スタジオを中心に成都スタジオと共同で15人の開発チームを結成。人工知能(AI)など最先端技術の開発を専門とするグループ研究開発拠点(Ubisoft La Forge)の中核としてフランスとカナダのチームと連携し、世界のゲーム制作と研究開発に「中国の知恵」を提供している。
人工知能(AI)プロジェクトについて紹介するユービーアイソフト・グループ研究開発拠点(Ubisoft La Forge)のアレクシス・ローラン中国地区ディレクター。(資料写真、上海=新華社配信)
今ではソニーやバンダイナムコ、ポケモン、セガ、ネクソン、ライアットゲームズ、エレクトロニック・アーツ、アクティビジョン・ブリザードなど世界的なゲーム会社が上海に現地法人を設立し、中国のゲーム会社も版権や運営、技術などの分野で海外大手との提携を深めている。日本の著名ゲームクリエイターの名越稔洋氏も21年に開発チームを率いて中国ゲーム大手の網易(ネットイース)に移籍し、新たなスタジオを開設した。国際協力がますます頻繁になる中、中国のモバイルゲームメーカーはこれまでの独自開発・リリースから多国籍企業との共同開発へと移行しつつある。
比較的しっかりとした基盤を持つ2次元、シミュレーション、女性向けなどの中国ゲームは、中国本土市場で足場を固めると海外進出の主力となった。上海米哈游網絡科技(miHoYo)、上海莉莉絲網絡科技(リリスゲームズ)、鷹角網絡(ハイパーグリフ)などは次々と海外に配信センターを設置し、世界各地のゲームスタジオと積極的に協力している。同時に、中国は既に世界第二のモバイルゲーム市場であり、今年上半期(1~6月)は国内ゲーム売上高が前年同期比2・1%増の1472億6700万元(1元=約21円)で、ゲーム人口が0・9%増の6億7400万人と過去最高を更新した。繁栄する市場に対する見通しが、より緊密な国際協力をもたらしている。
世界のゲームは現在、半数以上が「Unity」と呼ばれるゲームエンジンで開発されており、「原神」「明日方舟(アークナイツ)」など中国のゲーム会社による秀作も多い。同エンジンを手がけるユニティ・テクノロジーズが今年7月に開いた開発者向けカンファレンスでユニティ中国法人の張俊波(ちょう・しゅんは)総裁は、中国のゲーム会社は重要なパートナーであり、中国本土のテクノロジーエコシステムを深く耕すことで中国の開発者のイノベーション活力を一層引き出していきたいと語った。
中国ゲーム企業の鷹角網絡(Hypergryph)が開催したゲームをテーマにしたコンサート。(資料写真、上海=新華社配信)
7月末に開かれた中国最大のゲーム見本市「チャイナジョイ2024」(第21回中国国際デジタルインタラクティブエンターテインメント展覧会)では、ソニーグループのゲーム会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)上海の江口達雄董事長兼総裁が報道陣やプレーヤーとともにプレイステーションブースを訪れた。同社が出展した30作品余りには、今回体験版が初公開された中国ゲーム開発者支援プロジェクト「China Hero Project(チャイナヒーロープロジェクト)」の作品「絶暁(Unending Dawn)」「代号:錦衣衛(Brocade-Clad Guard)」のほか、中国国内パートナーが近日発売予定の「無限暖暖(Infinity Nikki=インフィニティニキ)」、プレイステーション用の「影之刃零(Phantom Blade Zero)」などが含まれた。
これまでの20年を振り返ると、海外企業と中国企業との協力は常に順風満帆だったわけではなく、版権保護から収益分配まで多くの摩擦があった。米ブリザード・エンターテイメントとネットイースも1年余り前に物別れしたが、この夏に関係を修復。「ワールド・オブ・ウォークラフト」(WoW)など「80後」(1980年代生まれ)の人々の青春の思い出をかき立てるゲームで中国のサーバーに戻ってきた。ネットイースゲームズはこれを機に世界市場を開拓し、ブリザードも中国でのゲーム開発と配信でさらなるサポートを得ることになる。「協力」と「ウィンウィン」は中国ゲーム産業の不変のテーマであり続ける。(記者/程思琪、張夢潔)