中国のSNSアプリ「小紅書(RED)」に投稿された「バー講座」活動。(資料写真、北京=新華社配信)
【新華社北京8月23日】中国の北京や上海、西安などで最近、バーに集まって学術交流を行う「バー講座」が流行し、SNS(交流サイト)で話題を集めている。若い研究者や文芸ファン、オフィスワーカーが議論し交流する新たな場となっている。
「バー講座」は通常、週末の夜などに店内で行われる。正式な学術講座とは異なり、特別な参加資格はなく、興味があれば誰でも参加できる。店内消費を要求されることもない。リラックスした自由な雰囲気で、堅苦しい形式もなく、参加者は若手研究者や大学院生が多いという。
夜のとばりが降りた上海市黄浦区の中山南路にあるバーでは、議論する声が頻繁に聞こえて来る。このバーでは2年前から新たな取り組みを始めた。リラックスして娯楽を楽しむバーの雰囲気は夕方に一変し、バイオ医学の知識を学ぶ教室に変わるのだ。この2年間ですでに27講座を開催しており、その日の講座が進むにつれて、店内は医学知識の普及や問診、質疑応答などが繰り広げられて実ににぎやかになる。演台と聴衆の間に明確な境界はなく、誰もが知識を伝える側にも知識を受ける側にもなれる。
北京市朝陽区のあるバーでは6月10日の夜、若者30人近くが集まり、天津市の南開大学講師による中国古典小説の講義に耳を傾けていた。店内は和気あいあいとした雰囲気で、一杯やりながら聞く人もいた。講義はテキストの鑑賞と分析から始まり、次第に議論が深まっていった。話題はさまざまな分野に及び、専門性は正規の学術的議論に引けを取らない。活動の発起人は、ユニークな対面式の公共交流空間を作ることが当初の目的だったと説明し、「私たちは同じ考えを持つ人と学びや読書後の感想を共有することを望み、共通の交流スペースを求めている」と述べた。聴衆の1人は「上に立つ教師はおらず、みんながリラックスして話せるので、より自由な議論ができる。お酒の力も借りて突然インスピレーションが湧き、意外な収穫が得られる」と語った。
バーで開かれる学術講座の魅力について専門家は、社交性と非公式性という2点を挙げている。「バー+(プラス)学術講座」の形式は楽しくストレス解消にもなり、消費者はさまざまな方法を通じて自らの存在感を示すことができ、「平等、参加、包摂、共有」の公共スペース議論スタイルが出現したと分析。また、現在数多く存在する社交場の中でも、バーのような場所は照明や雰囲気などによって、しばし悩みを忘れ、楽しくリラックスできる肩ひじを張らない環境を作り出し、ストレスを和らげる手伝いをしてくれるという。
今年の夏、仕事を終えた自分自身を「授業」に送り出すことが若者の間で新たな流行となった。バーでの講座に加え、青年センターの夜間学校も人気の活動になっている。仕事や勉強でストレスに直面する若者はリラックスして気分転換できる場を求めている。職場で疲れた気分を一新できると同時に、新たな知識に触れ、同好の友人と知り合い、社交の幅を広げることもできるのだから、まさに「一挙多得」と言えるだろう。(記者/沈氷潔)