「最も予測可能な危機」米政府債務が急増 35兆ドル超える

「最も予測可能な危機」米政府債務が急増 35兆ドル超える

新華社 | 2024-08-02 13:35:58

 

   【新華社ワシントン8月2日】米財務省が7月29日に発表した最新データによると、米連邦政府の公的債務残高が初めて35兆ドル(1ドル=約150円)を超えた。中国、ドイツ、日本、インド、英国の5カ国の経済規模の合計に匹敵する。

   米国の債務の歴史を振り返ると、ドルの支配的地位に依存して借金中毒になり、破綻した政治制度による容認と機能不全に陥った経済ガバナンスによる助長の下、債務規模が「持続不可能な道」で膨れ上がり、自らを損ない、世界に弊害を与えてきたことが分かる。一部の経済学者や歴史学者は、米国の債務水準は既に多くの危険な指標を上回り、米国や世界の未来に潜在的リスクをもたらしていると危惧する。

   ▽債務の急拡大で膨らむ利払い費

   米国の経済と債務はここ数年、対照的な動きを見せている。経済成長が低迷を続ける一方、債務水準は急激に上昇している。

米ニューヨーク州マンハッタンにある「借金時計」。米国の公的債務残高をリアルタイムで更新し、米国の各世帯の負担額を示している。(2023年5月29日撮影、ニューヨーク=新華社記者/劉亜南)

   米政府は1980年代から多額の債務を積み上げてきた。85年に純債権国から純債務国に転じて以降、債務規模は増加の一途をたどり、特にここ数年は急速に拡大している。2017年9月に20兆ドルを超え、22年1月末には30兆ドルを突破した。

   23年6月以降は100日ごとに約1兆ドルのペースで増加。6月に32兆ドル、9月に33兆ドルを超え、12月には34兆ドルに達した。

   国債残高の急増は、利払い費の増加に直結する。国債の利払いは今後30年間の連邦予算で最も急速に増加する部分になるとみられている。

   米連邦議会予算局(CBO)の予測によると、利払い費は22年の約4750億ドルから33年には3倍の1兆4千億ドル以上に増加。53年までに5兆4千億ドルに膨れ上がり、社会保障や公的医療保険のメディケアやメディケイドなどに充てる額を超える。

   米国の債務急増と利払い費膨張の背景には、表面と実態がかけ離れた米国経済がある。一部の公式経済指標や市場動向は「目覚ましい」が、史上まれにみる巨額債務、高金利、物価高騰が生じており、経済分野に見られる顕著な矛盾が米国の経済ガバナンスに厳しい課題を突き付けている。

   米債務残高が35兆ドルを超えたことに、米世論も大きな関心を寄せている。連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、今こそ「大人の態度」で債務問題を話し合う時だと指摘する。

   ▽「最も予測可能な危機」の責任は誰が負うべきか

   米国の経済と金融分野の混乱が批判を浴びている。中でも債務は最も道筋が明確で、最も直観的に結果を見通せる問題の一つである。米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、米国の公的債務を米経済が直面する「最も予測可能な危機」とさえ呼んでいる。

7月29日、米首都ワシントンにある財務省の建物。(ワシントン=新華社記者/胡友松)

   1980年代初め、レーガン政権の大規模減税を中心とした政策措置が米政府に史上空前の財政赤字をもたらし、債務残高が急増し始めた。クリントン政権時代は緊縮財政政策により一時的に連邦予算の黒字化を達成したが、それ以降は政府予算と連邦債務問題の政治化が進行。債務は「問題」ではなく「駆け引きの材料」とされるようになり、民主、共和両党による債務を巡る駆け引きは今も続いている。

   アナリストらは、両党とも米政府債務が制御不能に陥った責任から逃れられないと指摘する。政治的思惑から債務問題に「ブレーキをかける」ことに消極的で、特に大統領選挙を控える中、歳出削減や債務抑制に向けた具体的な政策を打ち出すことは考えにくいとの見方を示す。米紙ニューヨーク・タイムズは、民主党の大統領候補指名が確実視されるハリス米副大統領と共和党の大統領候補のトランプ前大統領が選挙期間中、債務問題についてほとんど語らず、両党とも債務の最大の押し上げ要因である社会保障と医療保険の削減に反対していることから、債務問題は今後数年でさらに悪化するとの見通しを示した。

   米ブルッキングス研究所のバリー・ボスワース上級研究員は、民主、共和両党とも将来の財政状況を安定させる計画を持っていないと指摘している。

   ▽制御不能な債務は米国を「危険な軌道」に追い込む

   古い債務返済のために新たな債務を増やす米国にとって、ドルの支配的地位が大きな下支えとなってきた。米国はドルの優位性を利用し、利上げと利下げによって自らのリスクを転嫁して、世界の富を搾取してきた。だが、長年の借金依存で「前借りして食いつなぐ」浪費癖を改められなくなり、危機の種をまいている。経済学者や歴史学者は、米国の債務データに幾つかの危険な指標が新たに見つかり、米国の金融覇権にさらなる打撃となる可能性があるとの認識を示す。

   現在の金利水準に基づくと、米連邦政府の今年の利払い費は最大で8700億ドルとなり、初めて国防費を上回る。来年は利払い費が1兆ドルを突破するとみられる。

雪に覆われた米首都ワシントンの連邦議会議事堂。(1月17日撮影、ワシントン=新華社配信)

   米メディアの報道によると、JPモルガン・チェースのアナリストは投資家向けのリポートで、増え続ける債務と財政赤字が米国の「財政の柔軟性」を弱め、経済の衰退に対する政府の対応能力を制限すると指摘。膨れ上がる財政赤字と債務水準の高さが潜在的なリスクとなっており、米国の財政見通しが短期的に大きく改善することは期待できないとの見方を示した。

   JPモルガン・チェースのダイモンCEOは、財政赤字問題は全世界に影響を及ぼすとして「米国はこの問題にもう少し注意を払うべきだ」と語った。

   アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のエコノミスト、デズモンド・ラックマン氏は、米財政の「危険な軌道」がドルと長期インフレ見通しに深刻な問題をもたらしていると指摘。外国の投資家が米政府には真剣に債務をコントロールする意志がないと感じれば、米政府への資金提供に消極的になり、ドルの危機につながる可能性があると懸念を示している。

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