25日、北京市内のスーパー「物美」中関村店の店内食堂。(北京=新華社記者/楊珏)
【新華社北京7月31日】中国ではこのところ、手頃な価格の食事を提供するスーパーマーケットが増え、瞬く間に若者たちの新たな「お気に入り」となっている。広州、北京、福州、武漢などの都市にあるショッピングモール内のスーパーの多くが、次々と「店内食堂」を開設したり、手頃な価格のファストフードの提供を始めたりしている。値段は20元(1元=約21円)前後で、数十種類の料理から選べ、ビュッフェ形式のところもある。スーパーは「ファストフード」を取り入れることで、より多くの消費者を引き付け、来店客数を増やしている。
北京市内のスーパー「物美」中関村店はこのほど、店内食堂の営業を開始した。正午になると多くの会社員が来店し、一番奥の食堂エリアに直行する。近くのオフィスビルに勤める謝(しゃ)さんは「ここに20元以下でビュッフェを利用できる大きな食堂ができたと聞いて、試しに来た」と話した。同市のショッピングモール「太陽宮凱徳モール」内にあるスーパー「華聯超市」もファストフードの屋台を開設した。20~30種類の作り立ての料理から選ぶことができ、平日のランチタイムは満席となっている。
25日、北京市内のスーパー「物美」中関村店の店内食堂で料理を選ぶ市民。(北京=新華社記者/楊珏)
「物美」の飲食部門責任者、陳少兵(ちん・しょうへい)氏によると、食堂事業を始める前、物美中関村店の飲食系屋台の売上高は1日わずか3~4千元だったが、食堂の試験営業を始めて1週間で、1日の利用客数が500人以上に上り、飲食の売上高が1万元を突破した。陳さんは「ピークの時間帯には席数が足りないと分かったので、次は食堂エリアの拡張を考えている」と述べた。
スーパー内食堂はなぜこれほど人気なのか。業界関係者の分析によると、消費が理性的になるにつれて、食事にも費用対効果の高さを求める若者が増えており、スーパー内の食堂という形態はこの傾向にマッチしているという。
中国商業連合会の専門家委員会委員で北京商業経済学会常務副会長の頼陽(らい・よう)氏は、「スーパーは元々周辺に住宅地や会社員が多いことから、手頃な価格の店内食堂をオープンする上で有利といえる。これらの会社員たちはフードデリバリーを利用したりレストランで食事を済ませることもできるが、フードデリバリーの味は店の味に及ばない可能性もあり、多くのレストランは値段が高い。そのため、スーパー内で食事をすることを選ぶ人も多いのだろう」と分析する。
中国のSNSアプリ「小紅書(RED)」に投稿されたスーパー内食堂での食事体験。(資料写真、北京=新華社配信)
頼氏は「クラウド消費の時代には、消費が時間や空間、地理的な壁を突破し、消費者はワンストップの買い物をするためにスーパーに行かなくても済むことが増えた。多くの商品は直接スマートフォンから注文できる。これも多くの大型スーパーやデパートが経営難に陥り、さらに閉店に追い込まれる原因となっている」と指摘。今の消費者が求めているのはむしろレジャー体験やライフスタイルであり、従来の日用消費財や日用品に比べて、生鮮食品や中国式の主食、手軽な調理済みの食品などを提供する方が消費者にとって魅力が大きいとの見方を示した。
スーパーが業種の垣根を越えて飲食業を手がけるのは、新規事業がもたらす収益以上に、店舗全体の資源の調整と活性化への期待もある。飲食は高頻度の固定的な需要であり、一定程度の顧客獲得と集客効果が見込め、呼び込んだ客がスーパーを回遊して他のエリアの商品を購入することも期待できる。長年スーパーを研究してきた首都経済貿易大学工商管理学院の陳立平(ちん・りつへい)教授は、食事利用客が食事のついでに何か買っていくことで、ワンストップ式の買い物というスーパーの従来の役割を復活させ、好循環を生み出すと分析した。陳氏は「ライフスタイルの変革という観点から見ると、飲食業への進出は中国のスーパーにとって大きな発展の可能性を秘めている」と述べた。(記者/楊珏)