【新華社合肥7月17日】地球上の生物の多様化が急激に進んだとされる約5億4千万年前の「カンブリア爆発」の要因の一つは海水中から硫化物とバリウムイオンが除去されたことだったとする研究結果を、中国の研究チームが発表した。
安徽省合肥市の中国科学技術大学によると、同大の衛煒(えい・い)副研究員、博士課程に在籍中の董琳慧(とう・りんけい)さん、黄方(こう・ほう)教授らのチームがこのほど、初期の動物に有害な作用をもたらしていた硫化物とバリウムイオンが海水中から除去されたことがカンブリア爆発につながったとする研究結果を、中国の科学誌「国家科学評論(ナショナル・サイエンス・レビュー)」に発表した。
海水中のバリウムイオンの除去とカンブリア爆発の関連性を示す図。(合肥=新華社配信)
カンブリア紀初期に起きた生物種の爆発的な増加はこれまで、海洋の酸化に関係していたと考えられていたが、科学技術大の研究によると、初期の動物は酸素をあまり必要としなかった。海洋の酸化はカンブリア爆発の結果であり、原因ではないとする説もある。カンブリア紀初期の海洋の酸化還元状態の変化と生物種の爆発的な増加との関連性に関するメカニズムはいまだ解明されておらず、さらなる研究が必要とされる。
衛副研究員らのチームは、長江プレートのカンブリア紀初期の金属に富む頁岩(けつがん)のバリウム同位体データから、エディアカラ紀からカンブリア紀への移行期に海洋が徐々に酸化して硫酸根濃度が上昇し、それまで蓄積していた溶解バリウムイオンが重晶石の形で大量に除去されたことを発見した。水中の高濃度のバリウムは水生動物の生存率を阻害することから、動物に有害な硫化物とバリウムイオンの除去が海洋の居住性を改善し、カンブリア爆発につながったとの見方を示した。(記者/戴威)