「731部隊」、Xでトレンド入り 歴史振り返るきっかけに

「731部隊」、Xでトレンド入り 歴史振り返るきっかけに

新華社 | 2024-04-12 21:06:47

   3月29日、日本の映画館に設置された「オッペンハイマー」のポスター。(東京=新華社配信)

  【新華社東京4月12日】「原爆の父」と呼ばれた物理学者を描いた映画「オッペンハイマー」の日本公開や、植民地時代のソウルを舞台にした韓国ドラマ「京城クリーチャー」の世界的ヒットをきっかけに、交流サイト(SNS)のX(旧ツイッター)で「731部隊」「人体実験」「南京大虐殺」などのキーワードがトレンド入りしている。第2次世界大戦中に旧日本軍の731部隊が中国で犯した人道に反する罪に再びスポットが当たり、国際社会から憤慨と非難の声が上がっている。

   ▽731部隊はなぜ知られていないか

   第2次世界大戦中、旧日本軍の731部隊は感染症予防や飲料水供給の研究を建前に、中国で生体実験を行い、細菌戦を展開した。旧日本軍の人道に反する罪には動かぬ証拠がいくつもある。それにもかかわらず、731部隊のトレンド入りを知った多くの西側諸国の人々から、さらに日本のネットユーザーからも、その存在を初めて知ったという声が相次いだ。

   その原因の一つは、日本の教科書がほとんど「731部隊」に触れず、日本軍国主義の犯した罪を隠そうとしていることにある。1983年、日本の教科書検定当局は歴史学者の家永三郎氏らに対し、執筆した歴史教科書「新日本史」から731部隊と南京大虐殺についての記述を削除するよう求めた。

   日本のネットユーザーからは、731部隊は「タブー視」されてきたとの声が聞こえる。ある医師は「医学部教育では医療倫理の教科書にすら731部隊は登場しない」と投稿し、「日本にはまだ医療倫理学なんてない」と嘆いている。

   SNSに投稿されたネットユーザーのコメントのスクリーンショット。(資料写真、東京=新華社配信)

   ▽日米のユーザーが論戦

   3月29日に日本で公開された「オッペンハイマー」は、広島と長崎への原爆投下という歴史を多くの日本の観客に思い起こさせた。日本に対する米国の「戦争犯罪」を非難する声も上がった。太平洋の向こうの米国からはこれに対し、「日本人は731部隊について学び、戦争被害者ぶるのをやめるべきだ」という反論も起こった。

   日米間の論戦はインタビュー番組で取り上げられ、さらに話題となった。個人メディアを運営するブロガーがミシガン大学の日系人教授に連絡を取り、なぜ米国は日本への原爆投下を謝罪しようとしないのかと質問。この教授は、米軍による日本への原爆投下は一種の「戦争犯罪」との認識を示したが、日本以外の多くのネットユーザーは日本が対外侵略戦争をしかけたことがそもそもの原因だと考えている。

   SNSに投稿されたネットユーザーのコメントのスクリーンショット。(資料写真、東京=新華社配信)

   米国のXユーザーが4月2日にこのインタビュー番組をリツイート(転載)し「731部隊について調べてみて」と投稿、すでに29万回以上閲覧されている。実際にこの投稿を見て731部隊について検索し、その存在を知ったという人は少なくない。あるユーザーは「学校では南京大虐殺についても習わなかった。後になって自分で知った」と投稿。731部隊の資料を見た多くのユーザーが憤りを表し、人々の想像を超える残忍さで「日本人が731部隊について話したがらないのも当然だ」と感想を述べる人もいた。

   ▽歴史振り返るきっかけに

   ハフポスト日本版は「『731部隊』を描いた韓国ドラマから日本人は何を学ぶか」と題した記事を掲載し、韓国ドラマ「京城クリーチャー」のモチーフとなった731部隊について解説した。この記事は日本のX上で大量にリツイートされ、ヤフーのウェブサイトにも転載された。閲覧者を制限するためかヤフーからはすでに削除されているが、SNS上では731部隊について日本のネットユーザーが活発な議論を続けている。

   記事は、731部隊を研究する一橋大学の加藤哲郎名誉教授の「日本人にも、海外の人にも、731部隊について考えるきっかけになったと思います。ドラマを入り口にして、本当はどうだったんだろうか、731部隊とはなんだったんだろうかということを、ぜひ考えて、学んでほしいです」という呼びかけで結ばれている。

   日本のXユーザーからはこのドラマについて「731部隊の人体実験の話で衝撃的でした。あの時代の日本人が許せなくなりました」「人の口に戸は立てられない」「日本人の私も黙りません。岩の上に落ち続ける水滴がジワジワと岩に穴を開け最後には割ってしまうように、水滴の一つとなります。祖父の世代が犯した罪を少しでも償う為に」などの投稿が続いている。

   SNSに投稿されたネットユーザーのコメントのスクリーンショット。(資料写真、東京=新華社配信)

   多くの良識ある日本人が歴史の真相を明らかにしようと努力してきた。作家の森村誠一は長編ルポルタージュ「悪魔の飽食」で、731部隊が中国に大規模な細菌戦研究基地を設立し、中国やソ連の戦争捕虜や民間人数千人を利用して生体実験を行った歴史的事実を明らかにした。明治学院大学国際平和研究所の松野誠也研究員は1940年付けの「関東軍防疫給水部将校高等文官職員表」を発見。浙江省の寧波市や衢州(くしゅう)市などでの細菌戦実施を日本軍の参謀本部が731部隊に命令した際の急迫性を示す資料となった。

   加藤氏はハフポストの記事で、731部隊の研究は深まり続け、歴史の真相が少しずつ明らかにされつつあるとし、「韓国の人たちはなぜ日本人をこのように描き、このドラマで何を訴えようとしたのかということについて考えてほしい。『なぜ』という疑問を持ち、深めていくことで相互理解にもつながるのではないかと思う」と語っている。

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