22日、東京の首相官邸前で緊急集会を開き、民意を無視して放射能汚染水の海洋放出を決めた日本政府に抗議する人。(東京=新華社記者/馮武勇)
【新華社東京8月27日】日本政府の決定に基づき、東京電力福島第1原子力発電所の放射能汚染水の海洋放出が24日に始まった。汚染水の放出は数十年続くとされる。
日本が放射能汚染水の海洋放出を決定するまでの全過程をさかのぼると、海への放出は以前から計画されていた「既定方針」であることがはっきりと見て取れる。まぎれもなく国際法に反する行いで、極めて身勝手で無責任な国家的行為であり、結局は福島原発事故の処理コストが全世界に転嫁されることになる。
計画されていた放射能汚染水の海洋放出
福島原発では2011年3月に深刻な事故が起きて以来、溶融炉心を冷却した水や雨水、地下水などの流入によって大量の高濃度放射能汚染水が毎日発生している。原発を運営する東電は同4月、放射能汚染水を海に排出して社会の大きな関心と懸念を引き起こし、同12月には「低濃度汚染水」の海洋放出計画を既に制定したと発表した。
東電は13年3月に汚染水処理の重要施設「多核種除去設備(ALPS)」の試験運用を開始したものの、問題が続発。頻繁な水漏れに加え、18年に処理済みの水に含まれるストロンチウムなどの放射性物質が基準値を超えていたことが発覚、21年には放射性物質の吸着に用いる排気フィルターの半数近くで損傷が見つかった。
ALPSの運用開始後、日本は処理済みの放射能汚染水を「処理水」と呼ぶようになった。原発敷地内の貯水タンクには放射能汚染水が約134万立方メートル保管されており、うち133万立方メートル余りが処理済みとされているが、東電が定義する「処理水」の基準を満たすのは3割程度にとどまり、基準に満たないいわゆる「処理過程水」がおよそ7割を占めている。ALPS処理を経ていない放射能汚染水も9千立方メートル近くに上る。
これらの「処理水」は最終的にどこへ行くのか。どのように解決すべきなのか。
日本の原子力を管轄する経済産業省は13年12月に小委員会を立ち上げ、「処理水」排出問題について技術的な検討を始めた。小委員会は16年6月、希釈した「処理水」の海洋放出が「コストを最も安く抑える」方法だと報告した。
日本政府は21年4月、国内外の反対意見を無視して、放射能汚染水の海洋放出を23年に実施すると一方的に発表。その後、海洋放出に向けた作業を大々的に推し進めた。東電は同12月、原子力規制委員会に処理水海洋放出設備の設置に関する実施計画を提出、22年7月に認可された。今年の1月13日、日本政府が海洋放出開始は「春から夏ごろ」になると確認。6月26日に東電が海洋放出設備の完成を発表し、7月7日に同委員会から設備検査の合格を示す「終了証」が交付された。
自作自演の「権威ある認証」
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は7月4日に日本を訪れ、福島放射能汚染水の処理に関する包括報告書を岸田文雄首相に手渡した。報告は、日本の海洋放出計画が「国際安全基準に適合」するとの認識を示し、日本はこれを受けて海洋放出計画の安全性が「権威ある認証」を得たと宣言した。
しかし、この報告の公正性と科学性については多くの疑問が残る。
日本は海洋放出を決めた後にIAEAに安全性評価を委託している。日本の目的が科学的、合理的な解決策を探すことではなく、IAEAを利用して海洋放出計画を「お墨付き」にすることだったのは明白である。
報告によると、日本政府は21年4月に海洋放出決定を宣言し、同7月にIAEAと「ALPS処理水の安全性評価」の委託に関する「付託事項」に署名。ただ、評価の対象は海洋放出計画に限られ、他の計画には関与しないことになっていた。評価の結論によって海洋放出計画が最も安全で信頼できるものだと証明することはできない。
日本はIAEAに評価を付託する前から「認証カード」を切るための布石を打っていた。
東京新聞によると、日本政府はかねてIAEAに巨額の分担金や拠出金などを支出し、複数の省庁の職員を派遣してきた。日本がIAEAに安全性評価を求めれば、こうした要素が結果に影響しないとは限らない。
韓国の最大野党「共に民主党」の議員は7月9日にグロッシ氏と会見した際、IAEAが中立と客観の原則を順守せず、放射能汚染水を海洋に放出するという日本の立場への迎合に終始し、周辺国に対する影響を考慮しないまま早急に結論を出したと指摘、遺憾の意を表明した。
IAEAは報告書の冒頭部分で、報告書の見解はIAEAメンバー国の観点を必ず反映するものではなく、報告書は日本の海洋放出計画を推奨も承認もしていないと説明。IAEAとメンバー国は報告書によって生じるいかなる結果に対しても一切の責任を負わないと強調している。この免責事項は、報告書が国際社会の意見を代表するものではなく、日本の海洋放出計画の正当性と合法性を証明できないことをはっきりと示している。
漁業者の強い反対を顧みず、海洋放出計画を堅持
東電が提出した放射能汚染水の処理やその他関連データに対し、専門家や環境保護団体は科学的な見地から、幾重もの疑念を抱いている。
米ミドルベリー国際大学院のフェレン・ダルノキ・ベレス教授は、日本が提出するデータは「不完全、不正確、不一致で一面的」だと指摘。日本の環境保護団体「FoE Japan」は東電の「処理水」という呼び方について①ALPS「処理」水の一部でヨウ素129やストロンチウム90などの放射性核種が依然として基準値を超えている②東電がこれまでに検査した水サンプルは貯蔵汚染水のわずか3%に過ぎず、検査結果は代表性に乏しい③福島の「処理水」は溶融炉心と直接接触しており、通常運転の原発からの排水と同列に論じることはできない-などさまざまな問題点を挙げている。
東電にはデータの改ざん、原発安全問題の隠ぺいといった「黒歴史」があり、心配は尽きない。
東京大学の学者、関谷直也氏は、福島だけでなく東電傘下の他の原発でも管理や安全面の問題が絶えず発生しており、東電の処理能力は信用できないと指摘。「海洋放出する資格が東電にあるのか」と疑問を呈した。
放射能汚染水の海洋放出計画はかねて日本全国、特に福島の漁業者の強い反対に遭ってきた。
日本政府はあの手この手で漁業従事者の説得を試みてきたものの、成功には至っていない。全国漁業協同組合連合会と福島県漁業協同組合連合会は、放射能汚染水の海洋放出に断固反対する特別決議を20年から4年連続で採択しているが、日本政府と東電は漁業者の強い反対を顧みることなく、海洋放出計画を堅持している。
是非の転倒、隠ぺいと偽装
放射能汚染水の海洋放出に対する国内外の激しい反対の声を前に、日本の当局は人々の耳目を惑わすため集中的な広報活動を発動。「放射能汚染水安全論」を大々的に宣伝し、日本の外交の重点にも据えている。
外務省や経済産業省、復興庁など日本の政府部門は公式サイトのトップページにALPS「処理水」の安全性をアピールする特集ページへのリンクを設置。外務省と経産省のSNSアカウントも複数の言語で作成した宣伝動画をページのトップに固定したり目立つ場所に置いたりしている。
太平洋島しょ国にも広報攻勢を展開。これら島しょ国は米国による太平洋での核実験で深刻な被害を受けていることから、福島放射能汚染水の海洋放出に反対する声が強いため、日本の重点的な「なだめ」の対象となっている。
各国の駐日外交官やメディア関係者向けの説明会も頻繁に開き、あらゆる方法で放射能汚染水海洋放出の「安全性」をアピールしている。日本は説明の中でも特に外国語版の資料で、放射能汚染水の代わりに「処理水」という言葉を使い取り繕っている。一部の駐日外国メディア関係者は、放射能汚染水の海洋放出の安全性に疑問を呈する報道をすると、東電や日本の関係者から電話やメールが来て圧力をかけられると明かした。
放射性物質の環境への放出に関するIAEAの安全規定に基づくと、放射性物質の放出を認可する際は、影響を受ける利害関係国に情報を提供し、協議を行う必要があるという点に留意すべきである。ところが日本は、周辺国から反対や疑念の声が上がる中、海洋環境や食品の安全に対する地域の国々の合理的な懸念を「政治カード」と中傷。一部右翼メディアに至っては「加害者」である日本を「被害者」に仕立て上げ、放射能汚染水の海洋放出に異議を唱える隣国への「報復」を怒りに満ちた論調で叫んでいる。
在日中国大使館は7月4日、福島放射能汚染水の海洋放出問題について中国の立場を説明し、日本のいわゆる「中国との対話を望む」という意思表明には誠意が欠けていると指摘した。中国はこれまで2国間や多国・地域間のチャンネルで日本と交流を進め、専門部門の意見や懸念を再三表明してきたが、日本は中国の立場を顧みることなく、既定のタイムスケジュール通りに海洋放出を進めることに固執している。
福島放射能汚染水の海洋放出は日本だけの私事、小事ではなく、海洋環境や人類の健康に関わる公事、大事である。日本政府は国際社会の正当な懸念を無視し、履行すべき国際義務に背き、放射能汚染水の海洋放出を強行し、海洋環境や人類の健康に危害を及ぼして、周辺国の合法的な権益を侵害している。断じて責任ある国のすることではない。