中国各地の伝統村落、観光で農村の産業振興を促進

   １１日、舟で江蘇省塩城市阜寧県にある穆溝古村を巡る観光客。（小型無人機から、阜寧＝新華社記者／季春鵬）

　 【新華社北京７月２５日】中国各地ではここ数年、保存を前提に古い村落を活性化させる取り組みが進んでおり、静的な保存から動的な継承への転換が促進されるなど、農村の産業振興に新たな活力を呼び起こしている。

　 交流サイト（ＳＮＳ）には、各地にある伝統村落の観光に関する口コミや攻略法が数多く投稿されている。民俗や信仰、伝統技法、人文環境などの無形文化遺産は伝統村落にとって最も貴重な財産であり、村の活性や活用につなげる上でも重要な一部分となっている。各地では今、観光地の規模拡大や整備、新たな文化観光シーンの創出など、さまざまな取り組みによって農村観光業を引き続き振興しており、新時代における農村の活性化を促進し、共同富裕を実現する「最も美しい産業」となっている。

　 例えば、湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州では、文化観光産業が自治州内にある３００の村の振興をけん引してきた。古城（昔の城郭都市）や古い町や村落などの観光地には昨年、１４５０万人余りの観光客が訪れ、観光収入は１３０億元（１元＝約２０円）に上った。観光を中心とする３次産業の自治州の経済成長に対する寄与率は７５・２％に上昇し、５０万人以上が観光で生計を立てられるようになった。pagebreak

   渼陂（びは）村の古い町並みにある店の木の扉に貼られた映画のスチール写真。（資料写真、吉安＝新華社記者／劉楊）

　 江西省吉安市青原区文陂鎮にある伝統村落、渼陂（びは）村は千年近い歴史を持つ。「紅色資源」や「紅色文化」（革命史跡などの観光資源や関連文化）を生かし、革命をテーマにしたさまざまな映画のロケ地となってきた。pagebreak

   浙江省衢州市開化県長虹郷真子坑村に広がる星空。（資料写真、衢州＝新華社配信）

　 浙江省衢州（くしゅう）市開化県長虹郷の真子坑村は、省内を流れる銭塘江の源流に位置し、銭江源国家公園保護区内にある伝統的な村である。「光害（ひかりがい）」がなく、空気も澄んでおり、青蔵高原に匹敵する透き通った星空を観測する条件がそろっている。現在は天体観測が楽しめる人気観光地として知られ、年間延べ約３万人の観光客が訪れる。pagebreak

   李官湾村楠山李バーベキューキャンプ場に設営されたテントの下で茶を入れる観光客。（資料写真、天水＝新華社記者／郎兵兵）

　 甘粛省天水市郊外の南山の山頂にある李官湾村には、夏になると市民や観光客らが涼を求めて次々と訪れる。今年開業した楠山李バーベキューキャンプ場は、キャンプに他の娯楽を組み合わせる楽しみ方が人気を呼び、一帯で最も有名な観光地となった。pagebreak

   さまざまな業種が集まり文化クリエーティブの集積地となっている古建築「潤徳堂」。（資料写真、浦江＝新華社記者／殷暁聖）

　 浙江省浦江県虞宅郷新光村は、古い村落と創客（メイカー、起業家）と農業・文化・観光を組み合わせた発展モデルを模索し、創客基地を開設した。新光村には、県内に現存する単独の古建築の中で最大規模の「潤徳堂」がある。かつては機械音が鳴り響き、粉じんが舞い上がる場所だったが、今では起業家らが手製のアクセサアリー店やカフェ、民謡酒場などを開き、さまざまな業種が集まる文化クリエーティブの集積地となっている。pagebreak

   磐安県安文街道の花渓村は国家３Ａ級観光地（上から３番目）の「花渓風景区」にある。（２０２１年１０月２日、金華＝新華社配信／郭麗泉）

　 浙江省金華市磐安県は「天然の酸素バー」として知られ、豊富な文化観光資源を持つ。磐安県安文街道の花渓村は大盤山国家級自然保護区に位置し、県内で初めて国有景勝地に指定された。同村では自然資源と無形文化遺産の「煉火」（真っ赤に焼けた大量の木炭を敷き詰めた畑の上を走り回るスリル満点のイベント）が人気を集めている。２０２２年は延べ３０万人余りの観光客が訪れ、観光収入は３８００万元余りに上った。pagebreak

   北京市門頭溝区碣石村の古民家のデジタル化模型。（資料写真、北京＝新華社配信）

　 北京市門頭溝区は同市初の全国伝統村落広域集中保護利用モデル区に指定されている。北京建築大学の教員と学生１００人余りが２２年７月から伝統村落の広域保護利用計画とプロジェクトの立案に協力し、１２の伝統村落に対するデジタル化保護プロジェクトに取り組んでいる。収集したデータは建物の保護や改修、利用の際に使用できるだけでなく、伝統村落文化の発信にも活用できるという。（記者／沈氷潔）