「基準クリア」で世界を欺くべきでない 福島第1原発汚染水巡る三つの疑問

「基準クリア」で世界を欺くべきでない 福島第1原発汚染水巡る三つの疑問

新華社 | 2023-05-20 10:57:08

   【新華社北京5月20日】日本政府と東京電力(東電)による原発汚染水海洋放出計画の中で、「多核種除去設備(ALPS)」が鍵となっている。両者はALPSで処理された原発汚染水を「処理水」と呼ぶことにこだわり、「処理水」は規制基準をクリアしていると考えているが、国際社会は福島第1原子力発電所の汚染水処理装置の安全性、有効性、持続可能性に一貫して疑問を抱いてきた。

   まず、ALPSは急ごしらえのプロジェクトで、国際的に運用された前例がなく、技術的に成熟しておらず、安全性に疑問が残る。ALPSは2013年に試験運転を開始し、22年3月、ようやく日本の原子力規制委員会の検査に「合格」した。

   実際、ALPS運転中には絶えず問題が起きている。16年に漏水が4カ所見つかり、18年にはいわゆる「処理水」に含まれるストロンチウムなどの放射性物質が基準値を超えていることが判明した。21年には排気中の放射性物質を吸着するためのフィルターの半数近くが破損した。フィルターは2年前に交換されたばかりで、その後東電は点検を行っていなかった。

   次に、福島第1原発汚染水の徹底した「処理」の有効性にも疑問が残る。東電によると、汚染水133万トンのうち132万トンを処理したというが、東電の公式サイトに掲載されている汚染水処理状況を示すグラフでは、「ALPS処理水」は3割に過ぎず、残りは「処理途上水」で、実際には基準を満たしていない。

   さらに問題なのは、国際環境保護団体グリーンピースが2020年、調査報告書「東電福島第一原発汚染水の危機2020」の中で指摘したように、原発汚染水には高レベルの放射性炭素14が存在するが、ALPSの設計当初、炭素14の除去は想定されていなかった。

   第3に、ALPSの「寿命」は不明で、持続可能性に疑問がある。東電はこれまで、ALPSの設計寿命、耐用寿命について公表していない。

   上記要因以外にも、ALPS「処理水」を監視する独立した第三者による監督メカニズムも欠如している。

   太平洋周辺国、太平洋島しょ国、漁業団体、環境保護団体などの利害関係者が参加、監視できなければ、いわゆる「処理水」が安全との日本の主張は一方的なものに過ぎない。

   フィジーのマノア・カミカミカ(Manoa Kamikamica)首相代行が疑問を呈したように、もしALPS処理水がそれほど安全ならば、日本はなぜ自国で農業用水などに利用しないのか。

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