九尾狐甲魚と、同魚と共に保存されていた板皮類(ばんぴるい)の化石標本。(資料写真、北京=新華社配信)
【新華社北京4月21日】中国科学院古脊椎動物・古人類研究所は、同研究所の蓋志琨(がい・しこん)、林翔鴻(りん・しょうこう)、山顕任(さん・けんじん)3氏が英ブリストル大学との共同研究で、約4億1千万年前(前期デボン紀プラギアン)の広西古代魚類特異埋蔵生物群から甲冑魚(かっちゅうぎょ)の新属新種「九尾狐甲魚」を発見したと発表した。尾びれを完全な状態で残した甲冑魚の化石の発見は世界で初めてだという。
蓋研究員によると、同種の尾びれは9本の指状に分かれていることから「九尾狐甲魚」と名付けられた。
中国では1913年に最初の甲冑魚化石が発見されているが、甲冑魚は主に軟骨と部分的なうろこで構成されているため、完全な状態の化石の発見は困難とされてきた。中でも頭部から後ろの部分の解明は100年余りにわたり未解決となっていた。2022年に重慶特異埋蔵化石群(化石鉱脈)で発見された霊動土家魚により甲冑魚の全身は明らかになったが、尾びれの詳細は分からないままだった。九尾狐甲魚の発見によりパズルの最後のピースがはまり、神秘のベールに包まれていた甲冑魚の尾の姿が明らかになった。
今回発見された九尾狐甲魚の体長は約10センチ。体と頭甲(とうこう)がそれぞれ約5センチで、全身は斜めに規則的に並ぶ細かい菱形のうろこで覆われていた。甲冑魚によく見られる下向きに湾曲した尾びれを持つが、先端は9本の指のように分かれ、原始的なフォーク状をしていた。尾びれの表面は整然と並んだうろこ質の鰭条(きじょう、ひれすじ)に覆われており、鰭条の下に強い放射状筋が付着していたことを示している。
魚の尾びれの面積や形状は、その魚の遊泳能力を示す重要な指標とされている。同化石は、尾びれの収縮時と弛緩(しかん)時の異なる状態がホロタイプ(正基準標本)とアイソタイプ(副基準標本)で完全に保存されており、甲冑魚の尾びれの細部形状を最大限明らかにしている点が珍しい。蓋氏は「これは甲冑魚が俊敏に泳いでいたことを示している。筋収縮をうまく利用して尾びれと水流の接触面積を変え、推進力を調整していたのだろう」と語った。
研究チームが九尾狐甲魚の尾びれの幾何学的形状に対して実施した遊泳速度分析でも、甲冑魚が高い遊泳能力を持ち、速く泳いでいたという結果が出た。その巡航速度は一部のより進化した有顎魚類を上回るほどで「積極的な捕食傾向が有顎類の起源につながった」という従来の仮説を覆した。
これらの研究成果はこのほど、中国の学術誌「国家科学評論(National Science Review)」電子版に掲載された。pagebreak
九尾狐甲魚の想像図。(北京=新華社配信)pagebreak
尾びれが保存された九尾狐甲魚の化石。(資料写真、北京=新華社配信)