【新華社北京3月14日】東京電力福島第1原発の処理済み放射能汚染水の海洋放出を今年の春から夏ごろに開始するとした日本政府の決定が、国際社会で大きな波紋を呼んでいる。福島の原発事故は天災だが、対応が不十分だったことから大量の放射能汚染水を生み出した。日本政府は今また、経済的理由から海洋放出で問題にけりをつけようとしており、新たな核汚染災害を作り出そうとしている。この一連の人災の責任は必ず追及しなければならない。
疑問① 「飲める処理水」は本当に安全なのか
チェルノブイリやスリーマイル島など、過去には多くの原発事故が起きているが、福島のように大量の汚染水が出たことはなく、事故処理のために自ら放射能汚染を拡散させようとした国もない。福島の放射能汚染水の海洋放出は暗い前例となるだろう。
日本政府は福島第1原発の汚染水について、多核種除去設備(ALPS)で浄化すれば安全であり、飲むことも可能と主張しているが、このような説明に騙される者などいない。
東電のデータによると、処理済みとされる汚染水はトリチウムの濃度が基準値を超える以外にも、60種類以上の放射性核種が含まれており、うち70%以上で濃度が基準値を超えている。一部の核種は現時点で有効な浄化処理技術がなく、処理水の本質は依然として汚染水である。国際環境保護団体グリーンピースは2021年4月、ALPSはトリチウムや炭素14を除去できないだけでなく、半減期が長く、人体や環境に危険なヨウ素129やセシウム135、ストロンチウム90などの放射性核種を完全に除去することもできないと発表した。
東電と日本政府が策定した計画によると、福島第1原発の廃炉作業は30~40年かかる。放出予定の汚染水は現時点で130万トン余りあり、廃炉期間中は1日当たり150~170トンのペースで汚染水が増え続ける。「パンドラの箱」を一度開けてしまえば、今後の長い廃炉の過程において、海洋生態系と水産物の安全問題は日本による放射能汚染水の海洋放出の影に覆われてしまうだろう。
第一に、日本は再び重大な放射能汚染災害に直面する恐れがある。2021年のデータによると、日本では水産物の約8%から放射性セシウムが検出された。放射性元素はDNAを破壊し、神経系統の損傷、臓器機能の低下、貧血、がんなどの疾病を引き起こす。日本政府の計画は、民衆の生命健康と福祉を無視している。
第二に、多くの隣国が不可逆的な影響を受ける。太平洋諸国の生存と発展は海洋資源に深く依存しているが、完全な除去が不可能な放射性物質が海洋食物連鎖に拡散すれば、水産物の安全は脅かされ、周辺国の水産業も大きな打撃を受けることになる。
第三に、世界は長期にわたり放射能汚染の暗い霧の中に閉じ込められる。ドイツのヘルムホルツ海洋研究センターが実施したシミュレーションによると、汚染水は放出から57日以内に太平洋の大部分に拡散する。3年後にはアメリカやカナダに到達し、10年後には世界の海域に広がる。一部の放射性物質の半減期は数百年から千年以上で、海洋生物の体内に蓄積、または海底に沈殿し、より複雑な経路を通じて世界の生態系を破壊し、全人類の繁栄に影響を及ぼす。
疑問② 「処分しない」約束になぜ背くのか
日本政府と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)に対し「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と書面で約束した。ところが東電はその後、福島第1原発の限られた敷地ではタンクを大量に建設できず、既存のタンクも間もなく満杯になることから、放射能汚染水にろ過、浄化、希釈処理を施して海に放出せざるを得ないと発表した。
ただ実際には、日本の環境保護団体が放射能漏れで放置されている原発付近の大量の土地へのタンク増設を政府に提案しており、他にも水蒸気放出や水素放出、地下埋設、地層注入などさまざまな方法がある。日本政府は経済的コストと政治的将来だけを考えており、世界の海の安全、全人類の健康と福祉をないがしろにしている。
放射能汚染水の海洋放出計画は2021年4月の発表以降、日本国内でも反対されてきた。関連の世論調査では、国民の55%が海洋放出に反対している。日本の複数の漁協の代表もこのほど、放出反対の姿勢は変わらず、引き続き政府に誠意ある対応を求め、漁民が損失を受けないようにすると表明した。計画は中国や韓国、ロシアなど近隣国の強い反発も引き起こし、ベトナムやフィリピン、タイ、カンボジアなど東南アジア諸国と太平洋島しょ国の政府関係者や学者、環境保護専門家なども、海洋環境を破壊する日本のやり方を制止するよう次々と呼びかけている。国連の人権専門家や太平洋島しょ国フォーラムなども強い懸念を示す声明を出したが、日本政府はこれらに聞く耳を持たず、独断専行している。
疑問③ 不祥事の続く東京電力を信用できるのか
福島原発の汚染水処理は東京電力が実施する。同社は原発の安全運行面で多くの不良記録があり、情報の隠匿や虚偽報告、改ざんの前科がある。信頼性と透明性が欠如しており、とっくに信用破綻している。
東日本大震災で原発が緊急冷却機能を喪失した時も、東電は海水冷却による原子炉の損傷を懸念し、遅々として行動を起こさなかった。翌日に1号機の建屋が爆発した際もすぐに政府に報告しなかった。一連の時系列におけるこの二つの出来事は、最も少ない代償で原発事故に対処する重要なタイミングだったと考えられているが、いずれも機会を逃している。報道によると、冷却機能の喪失は以前から問題として指摘されていたが、東電はデータを改ざんすることで安全検査をパスしている。
2021年9月には、ALPSの放射性物質を吸着するフィルター25カ所のうち、24カ所が破損していたことも明らかになった。2年前にも同様の破損があったが、東電は対策を怠っていた。
福島原発汚染水は排出量が多く、実施期間も長い。浄化装置の有効性と管理能力は不確実であり、東電が過失により基準超えの放射性物質を放出するリスクや、放射性核種の長期蓄積と拡散のリスクを排除することはできない。東電が約束した安全基準を技術的に達成できるかどうかはさておき、これまでの不正行為だけを見ても、東電による放射能汚染水放出を人々はどうして信頼でき、安心できるのか。
疑問④ 国際法をなぜ堂々と無視するのか
多くのシンクタンクと核問題の専門家は、日本政府のこうした動きは国際条約に違反しており、法理的に容認できないと指摘している。
オーストラリアのローウィ国際政策研究所は、国連海洋法条約、ロンドン条約・議定書という少なくとも二つの国際条約が海上への廃棄物投棄について明確に規制または禁止していると指摘する。国連海洋法条約第210条は「法律と規則、措置は、各国当局の許可なしに投棄してはならないことを保証しなければならない」と明確に示しているが、日本の排出決定は事前にその他の沿岸国の許可をとっていない。ロンドン条約・議定書は、海洋環境への故意による放射性廃棄物排出を禁止するとともに、放射性廃棄物は濃度を問わず海洋環境に深刻な脅威を与える可能性があると指摘している。日本政府の決定は、核廃棄物を投棄しないという1994年の約束にも背いている。
グリーンピースで古くから核問題に取り組む専門家、ショーン・バーニー氏は国連海洋法条約について、各国には海洋環境の保護に協力する義務があり、国際法に基づき責任を負い、損害や危険を移転してはならないと規定していると指摘した。排出計画が実施されれば、放射性物質がわずか数年で国の枠を越えた汚染になるのは明らかであり、世界規模で漁業や海塩など海産物関連サービス業の衰退を招く恐れがある。これに対し日本政府は、海洋環境の国を越えた影響を含む総合的な環境影響評価を行っていない。
日本による放射能汚染水の海洋放出は人権災害でもあり、多くの国の人々の生存権や環境権、発展権などを損なうことになる。インドネシア戦略・国際研究センターの学者、ベロニカ氏は、放射能汚染水の海洋放出が人類の生命に与える致命的な影響と人体に与える深刻な影響を多くの科学者が明確に指摘する中で、日本が今も計画の実施を強引に進めていることについて、世界人権宣言と「市民的および政治的権利に関する国際規約」に対する重大な違反だと語った。複数の国連人権専門家も共同声明で日本政府の決定に深い失望感を示し「日本国内外の関係人口が十分な人権を享受する上で、大きなリスクになる」と指摘した。
日本は、原子力事故早期通報条約や原子力安全条約など多くの国際条約の締約国でもある。安全な対処手段を尽くさず、情報を全面的に公開せず、周辺国や国際機関と十分に協議しない状況下で、日本政府が海洋放出の正式決定を急ぎ、既成事実化を企図し、災害的結果を太平洋諸国へ転嫁してはばからないのなら、必ず約束違反の代償を払うことになる。
終わりに
海は人類共通の財産、共生の場であり、放射能汚染水の海洋放出は決して日本一国の問題ではない。日本は海洋放出の時点から「天下の人に背いた」という罪の十字架を背負うことになる。日本は侵略と拡張の結果として核攻撃を受けた身であり、核問題の処理により慎重であるべきなのに、何の教訓もくみ取らず、放射能汚染水の海洋放出という子孫にまで影響を及ぼし、良識に欠ける決定を公然と下してしまった。罪があれば必ず罰がある。日本は最終的に、このような人類に反し、生命と倫理にもとる行為に対して重い代償を払うことになる。
映画「流転の地球」には「最初はこの災害を気にする人は1人もいなかった。山火事、干ばつ、種の絶滅、都市の消失、この災害が私たち一人一人と密接に関係するまで…」という言葉がある。放射能汚染水の海洋放出はまさに人為的な災害であり、日本はその張本人になりつつある。(作者/国際問題観察員 龔蓉)