「赦しの花」咲く中帰連平和記念館 中日国交正常化の力に

「赦しの花」咲く中帰連平和記念館 中日国交正常化の力に

新華社 | 2022-09-13 14:01:42

 【新華社東京9月13日】中国帰還者連絡会(中帰連)は、釈放されて帰国した中国侵略日本軍の戦犯らが1957年9月に「反戦平和、日中友好」を願って設立した。埼玉県川越市にある中帰連平和記念館で、中日国交正常化を推進した民間の力を探った。

 記念館のガラス扉には、鮮やかなアサガオの写真が張られている。真っ青なラッパ状の花の下にある「ハート型」の葉が目を引く。80歳を超える同館の芹沢昇雄事務局長は、これは普通のアサガオではなく「赦(ゆる)しの花」だと語った。

 「なぜ赦しの花なのか」という疑問を抱きながら、記念館の展示室に足を踏み入れた。

 展示室は壁一面に写真が張られ、テーブルいっぱいに本が置かれ、「前事不忘、后事之師(過去を忘れず、後の世の戒めとする)」などと書かれた大きな書道作品が数多く展示されていた。「中国人を生体解剖 洗脳で殺しの意識なく」「家に火つけ 撃ち殺した」「細菌実験 証言こそ償い」など衝撃的な文章が並ぶ。

 芹沢さんは「日本では戦争を語る時、ほとんどの人が『東京大空襲』などの被害経験しか話さない。しかし、講演や本の出版、ドキュメンタリー制作などを通じて、自らが戦時中に中国で犯したさまざまな罪を打ち明ける人々もいる」と話した。

 戦犯として遼寧省の撫順戦犯管理所にいた副島進さんは56年夏、釈放・帰国を前に、指導員からアサガオの種を手渡され「次に中国に来る時は、武器ではなく花束を抱えて来てほしい」と言葉を掛けられた。副島さんと同じ年、撫順と太原の戦犯管理所に収容されていた戦犯千人余りが日本に帰国した。新中国が西側諸国から断絶され、中国と日本の国交もなかった時代に、中帰連は自発的に日本による中国侵略の罪を明るみに出して批判し、新中国に対する日本社会の理解を促して、両国の国交正常化を推進する民間の中核的な力の一つとなった。

 閲覧室では、中帰連会員の著作「私と戦争と」「侵略-従軍兵士の証言」「帰ってきた戦犯たちの後半生-中国帰還者連絡会の四〇年」「人間の良心-元憲兵土屋芳雄の悔悟」などが紹介されていた。芹沢さんによると、会員らは存命の間に書籍数十冊を出版し、メディアや各友好団体が制作したドキュメンタリー数十編に参加した。書籍のほとんどは会員による自費出版だったという。

 芹沢さんは「記念館には、戦犯が残した書籍や学者から寄贈された書籍が計5万冊余りあるほか、史料もいくつかある」と説明。数枚の黄ばんだ日本語版「中華人民共和国最高人民検察院の起訴免除の决定書」を取り出して「これはある戦犯が生前保管していた原本。困難に直面するたびにこの紙を見て、自身が犯した罪と新中国の赦しを思い出していた。自身が平和の道を歩み続ける支えにもなったそうだ」と紹介した。

 中帰連の会員らは57年以降、自らの体験に基づき、中国侵略日本軍による残虐行為を明るみに出して批判し、犠牲となった中国人徴用工の遺骨返還、中国への謝罪訪問、歴史教科書改ざんへの批判、自衛隊海外派遣への抗議など、実際の行動を用いて日本で平和・反戦運動を展開したほか、中国との友好交流活動にも積極的に携わってきた。真実の歴史が後世に引き継がれていくよう願いを込めて、中帰連平和記念館を川越市郊外に設立し、会員らが残した史料や書籍を保存した。

 20年余りにわたって中帰連の活動を追っている明治学院大学の石田隆至国際平和研究所研究員と張宏波(ちょう・こうは)教授にもオンラインで話を聞いた。

 石田氏は、中帰連の会員が日本で反戦・平和運動を行う根本的な理由について、戦争への深い反省だと指摘。「普通の日本人を殺人の道具や『鬼』に変えたのは何だったのかと深く考え、新中国での裁判によって良心が目覚め、『人間』に戻ることができたと深く感謝しているからだろう」との認識を示した。

 張氏は、中日国交正常化50周年に当たる今年、両国が国交樹立の「原点」と「出発点」を再確認することは非常に重要だとした上で、中日国交正常化の原点は日本が歴史を認め、深く反省することにあると指摘。他国を侵略した歴史を選択的に忘れている人たちに同記念館を訪れてほしいと語った。

 記念館の本棚に「赦しの花」という絵本がある。実話を基にしたもので、副島さんが中国から持ち帰ったアサガオの種を自宅の庭に植え、新たに実った種を周りの人や中帰連の会員に贈ったことが描かれている。

 自宅でもアサガオが毎年花を咲かせているという芹沢さんは、当時の歴史や「赦しの花」の物語をより多くの日本人に知ってもらい、両国の平和と友好が促進されることを願っていると語った。(記者/郭丹、鈔文、李光正)

本ウェブサイトに関するご意見、ご提案等が

ありましたら xinhuanetjp@126.com までご

連絡ください。