広東省広州市にあるフィロリコーヒーでハンドドリップコーヒーを入れ、中国のバリスタと経験を共用する川上敦久さん(手前)。(9月2日撮影、広州=新華社配信)
【新華社広州10月11日】中国広東省広州市にある斐洛里(フィロリ)コーヒー店でこのほど、日本のコーヒー焙煎士、川上敦久さんが中国の若手バリスタ数十人に向け講義を行った。この交流は単なる技術指導を超え、コーヒーを媒体とした深い結びつきを生んだ。
川上さんが初めて中国のコーヒーを飲んだのは12年前。偶然雲南産の生豆を手に入れ、焙煎しドリップしてみたものの、酸味と雑味しか感じられなかった。「中国のコーヒーは日本市場には合わないかもしれないと思った」と当時を振り返る。
広東省広州市にあるフィロリコーヒーでハンドドリップコーヒーを入れる川上敦久さん。(9月2日撮影、広州=新華社配信)
2024年、日本のフィロリコーヒーの試飲会に招かれた川上さんは、コーヒー豆に触れた瞬間、すぐに変化を感じた。豆はふっくらとしていて、茶褐色の宝石のようにつやがあった。焙煎時に立ち上る香りは、雲南コーヒーに対するこれまでの固定概念を覆すものだった。
雲南省は日照が十分で標高が高く、昼夜の寒暖差が大きいという自然条件を有し、スペシャルティコーヒーの栽培に理想的な環境が揃っている。同省のコーヒー栽培面積は昨年末時点で120万ムー(8万ヘクタール)を超え、年間生産量は14万トンを突破し国内の98%以上を占めた。
雲南コーヒーがわずか10年ほどの間に、これほど変化したのはなぜか。フィロリコーヒーの責任者は、当時はの豆の処理技術が不十分だったと指摘。地元ではここ数年、一連の政策を打ち出して高品質な豆生産と高付加価値加工の比率向上に取り組んだと紹介し、果実から生豆に加工するプロセスが大きく改善したことで、雲南コーヒー豆は形状も色も優れ、品質が飛躍的に高まったと述べた。
広東省広州市にあるフィロリコーヒーでハンドドリップコーヒーを入れる川上敦久さん。(9月2日撮影、広州=新華社配信)
フィロリは日本でコーヒー豆の焙煎や販売など手がける企業で、77年にわたり日本国内の980社にサービスを提供してきた。24年9月、同社は中国の実業家、包林(ほう・りん)氏と提携し、広州フィロリコーヒーを設立、中国本土市場への進出を開始した。包氏は「日本のコーヒー技術を中国に届けると同時に、中国の優れたコーヒーを日本の消費者に紹介したい」と語る。
現在、フィロリは中国国内に直営店を6店舗展開、27年までに30店舗まで拡大する計画を立てている。一方で包氏は、高品質な雲南コーヒーの日本市場進出にも自信を持っており、若者が集まる東京代官山にも店舗を構えた。店内で使用するコーヒー豆は、エチオピア産などに加えて雲南産も楽しめる。
今回初めて中国を訪れた川上さんは、コーヒーの味を確かめるだけでなく、中国のバリスタとコーヒー文化への理解や焙煎技術について意見交換を期待している。「世界的な飲料であるコーヒーが、日中交流の新たな架け橋となりつつある。雲南コーヒーを通じて新しい商品開発を進め、日本の消費者に中国コーヒーの魅力を伝えると同時に、両国のコーヒー産業の発展を推進したい」と語った。(記者/陸浩、仇清漪)