濰坊大唐楽器発展で生産されたカスタムエレキギター。(2024年12月4日撮影、昌楽=新華社記者/王志)
【新華社済南2月27日】中国東部の山東省に、世界のエレキギターの3本に1本が作られているという町がある。濰坊(いほう)市昌楽県の鄌郚(とうご)鎮。熟練した技を持つ弦楽器職人が、北米やアフリカ、中国東北部から調達した木材を使い、浙江省や広東省などで生産されたパーツを組み合わせ、美しい音色を奏でるエレキギターを一本一本製造している。
同鎮で楽器が生産されるようになったのは1970年代の初頭。昌楽県楽器行業(産業)協会の責任者の玄海雲(げん・かいうん)氏によると、農業に偏った単一的な産業構造を脱却するため、1972年に昌楽県楽器廠(工場)が同鎮につくられ、バイオリンや中国の弦楽器「月琴」「京胡」などの生産を開始した。
中国の楽器産業は改革開放後に急速な発展の機会を迎えた。同鎮では1993年末に韓国との合弁会社、山東昌楽繆斯(きゅうし)楽器が設立され、ギターの生産がスタート。もっとも当時はギターに触れたことがない従業員ばかりで、これが技術面での障害にもつながったことから、数十人が韓国研修に送り出された。
玄氏によると、韓国での研修を終えて帰ってきたメンバーが、同鎮のエレキギター産業の技術的な柱になった。2000年以降にそのうちの何人かが自身の工場を設立したことで、産業の発展が進んだという。
昌楽昌韵達楽器の工場で輸出用エレキギターの製作に追われる従業員。(2024年12月3日撮影、昌楽=新華社記者/王志)
同鎮最大のエレキギターメーカー、昌楽昌韵達楽器の張建軍(ちょう・けんぐん)董事長(54)は、地元のギター工場の運送を10年以上にわたって担当した後、2012年に自身の会社を設立した。「当初は従業員が10人もいなかったが、今では130人以上になり、エレキギターの年間生産量は約20万本、年間売上高は1億元(1元=約21円)近くに上っている」と話す。
同鎮には現在、楽器生産とパーツ加工の企業が108社あり、1年間にエレキギターを200万本、パーツを500万セット生産、全国生産量の4割を占めている。うち9割が130余りの国と地域に輸出され、年間総収入は10億元を超える。
昌楽県の桑海強(そう・かいきょう)県長は「鄌郚鎮は楽器生産の50年以上の歴史を経て、先進的な生産技術と多くの熟練した産業従事者を持つようになっただけでなく、整った産業チェーンを形成し、新業態も打ち立てた」と語る。
また同鎮の劉凱(りゅう・がい)副鎮長は、エレキギターは地元の人々に富をもたらす特色産業となっており、総人口8万人のうち5千人以上が楽器産業に従事し、平均で約8万元の年収を得ていると紹介した。
同鎮で生産されたエレキギターはかつて、大部分が海外のOEM(相手先ブランド生産)製品として販売されていた。「ずっとそのままなら、鄌郚のエレキギター産業は産業チェーンの下流にとどまり、薄利で安価な下請け工場のポジションに居続けただろう」と玄氏は振り返る。
昌楽昌韵達楽器の展示ホールに飾られた自主ブランドのエレキギター。(2024年12月3日撮影、昌楽=新華社記者/王志)
こうした状況を変えるため、同県はここ数年、楽器企業への新たな投資を積極的に奨励し、従来のOEM生産から自主ブランド生産への転換を推進、国際的な影響力を高めてきた。
同鎮はさらに、オリジナルのカスタムギターという新たな分野に挑んでいる。濰坊(いぼう)大唐楽器発展の担当者、李華波(り・かは)氏は、大量生産のエレキギターは1本の単価が300~400元にすぎないが、カスタマイズしたエレキギターは2千~1万元になり、1本で10万元するものもあると紹介した。
昌楽県の王驍(おう・ぎょう)党委員会書記によると、鄌郚鎮は「雅特」や「徳魯拉」など40以上の国産ブランドを育ててきた。保有する特許は35項目、版権は42項目に及ぶ。製品は米国や英国、ドイツ、オーストラリア、日本、韓国などの国・地域に輸出され、高く評価されている。(記者/王念、王志)