竜城熱河サソリの化石標本。(南京=新華社配信)
【新華社南京2月24日】中国科学院南京地質古生物研究所はこのほど、同研究所現代陸地生態系起源研究チームの黄迪穎(こう・てきえい)研究員が主導する新研究の中で、約1億2500万年前に生息していた古代のサソリ、「竜城熱河サソリ」(eholia longchengi gen. et sp. nov.)の化石を遼寧省朝陽市で発見したと明らかにした。中国国内で中生代のサソリ化石が見つかったのは今回が初めてだという。関連の研究成果は総合学術誌「科学通報(Science Bulletin)」で発表された。
竜城熱河サソリは、約1億2500万年前の白亜紀前期に生息していた種で、化石の発見地である遼寧省朝陽市竜城区にちなんで命名された。同地域では、羽毛を持つ恐竜や初期の鳥類、哺乳類、昆虫、植物などの美しい化石が大量に保存された熱河生物群が発見されている。
化石の形態から推定すると竜城熱河サソリは大型で、体長は既知の中生代のサソリ化石よりも大きい10センチに達するという。黄氏は「もし現代の環境にいたなら、多くの小動物の天敵となり、数多くの小型脊椎動物の幼体を捕食していた可能性さえある」と語った。
竜城熱河サソリが昆虫を捕食する様子を示す想像図。(南京=新華社配信/孫捷)
研究を進めた結果、竜城熱河サソリは当時の生態系において「中間的な捕食者」という重要な役割を担っていたことも判明。昆虫やクモを主な餌とし、小型脊椎動物の幼体を捕食していた可能性もある一方で、自身も初期の鳥類や哺乳類、さらには恐竜などの大型動物に捕食されていた可能性があるという。このような複雑な生態関係によって形成される巨大な「食物網」の中で、竜城熱河サソリは重要な接点になっていたと推測される。
黄氏は「サソリの化石は、人々が想像するほど多くはない」と指摘。これまで中国では山東省、湖北省、内モンゴル自治区で三つの化石が見つかっただけだとし、今回の竜城熱河サソリの発見によって中国のサソリ化石の記録が拡充されるとともに、科学者が中生代の生物多様性に対する理解を深め、当時の生態系を再構築する機会がもたらされたとの認識を示した。
竜城熱河サソリの化石は現在、遼寧省朝陽市の化石谷博物館に収蔵されている。(記者/王珏玢)