中国(南京)文化・科学技術融合成果展覧交易会の「デジタル長江」メタバース博物館ブース。(2023年9月21日撮影、南京=新華社配信)
【新華社北京12月2日】ここ数年、メタバースがデジタル経済の新たな成長分野となっている。中国では2030年までにメタバースの市場規模が8500億元(1元=約21円)に上ると予測されている。
科学技術イノベーションの中心地として、北京市はメタバース産業が急速に発展し、企業数が急激に増え、技術イノベーションと応用シーンの創出も加速している。
メタバースの急成長には人工知能(AI)やデジタルコンテンツ制作、XR(クロスリアリティ=仮想空間や拡張現実などの総称)端末など中核技術による支えが不可欠である。こうした技術はメタバースの構築に力強い基盤を提供するだけでなく、応用シーンの刷新と開拓も促している。
山西省大同市にある雲岡石窟のメタバース空間を見学する観光客。(2023年10月19日撮影、太原=新華社記者/王学濤)
北京は技術イノベーションにとどまらず、各区の特色ある資源を活用し、多様な応用シーンも創出している。朝陽区には全国初となる次世代インターネット「ウェブ3・0」に焦点を当てた中関村ウェブ3・0産業パークのほか、北京デジタルヒューマン基地を設置している。
幅広い応用シーンの背景には科学技術企業の力がある。北京市科学技術委員会、中関村科技園区管理委員会によると、24年9月末時点で北京のメタバース(ウェブ3・0)関連企業は1万2535社に上り、全国の約5・2%を占める。北京は今後、市・区間の連携を強化し、中核技術の開発や基盤技術プラットフォームの構築、応用シーンの開拓、ウェブ3・0関連イノベーションの生態系の改善に力を入れ、ウェブ3・0産業のイノベーションと発展をさらに推進するとしている。
北京のメタバース分野の急速な発展は、全国的なメタバース産業台頭の縮図に過ぎない。大まかな統計によると、これまでに発表された国家級・省級のメタバース関連政策文書は150件を超え、その対象は31省・自治区・直轄市に及ぶ。これらの政策はメタバース産業の発展に政策面で有力な後ろ盾を提供するだけでなく、積極的な取り組みに対する各地の意欲も引き出している。
2024中国国際ビッグデータ産業博覧会でAIと融合したメタバース空間を体験する来場者。(8月28日撮影、貴陽=新華社記者/楊文斌)
浙江省寧波市は今年9月、「寧波市のソフトウエア産業の質の高い発展推進に向けた特別政策意見」を発表し、第6世代移動通信システム(6G)や量子情報、脳型知能、大型AIモデル、メタバース、デジタルツインなど最先端分野の新興技術に関するソフトウエアの研究開発と応用を加速する方針を示した。江蘇省揚州市は「未来産業の育成・発展加速に関する指導意見」を発表し、メタバース産業の「AI+(プラス)」行動を実施し、製造やエネルギー、医療、金融など分野でのAI導入を加速させ、メタバースの応用シーンを広げるとした。山東や河南などの省も相次ぎ関連政策を打ち出し、メタバース産業のイノベーションと発展を推進している。このほか、多くの地域が各自の優位性と特色ある資源を生かし、メタバース産業パークやイノベーションのプラットフォームを構築している。
メタバースは多くの分野で大きな変革を引き起こすと見られている。中央財経大学情報学院の高勝(こう・しょう)教授はメタバースについて、従来の手法を打破し、教育研修や医療・ヘルスケア、スマート製造などの分野で大きな潜在力を示すとの見通しを示した。