中国の科学者、「嫦娥6号」月試料の組成解明 月の裏側研究史の空白埋める

中国の科学者、「嫦娥6号」月試料の組成解明 月の裏側研究史の空白埋める

新華社 | 2024-09-21 13:45:45

   【新華社北京9月21日】中国科学院国家天文台は18日、中国の科学者が月探査機「嫦娥6号」の帰還機が持ち帰った試料(サンプル)の物理的、鉱物的、地球化学的特徴を解明し、そこに含まれる月の初期進化と月の裏側の火山活動に関する情報を分析することで、月の裏側に関する研究史の空白を埋めたと発表した。

   研究は中国科学院国家天文台の李春来(り・しゅんらい)研究員、「嫦娥6号」の胡浩(こ・こう)総設計師、中国航天科技集団第5研究院の楊孟飛(よう・もうひ)院士(アカデミー会員)が率いる共同研究チームによって進められた。

   「嫦娥6号」の月試料が持つ独自の価値とは何だろうか。

   「嫦娥6号」は初めて月の裏側から試料を採取するという快挙を成し遂げ、1935・3グラムの貴重な試料を持ち帰った。これ以前に人類が採取した月の試料は、全て月の表側から採取されている。

「嫦娥6号」と「嫦娥5号」、米国のアポロ計画とソ連のルナ計画の着陸地点の模式図。(北京=新華社配信)

   「嫦娥6号」の試料採取地点は、月の裏側にある南極エイトケン盆地内のアポロクレーターの端に位置しており、この地域は地殻が非常に薄いため、月の裏側にある初期衝突盆地の出発物質が見つかるのではと期待されている。

   李氏は「嫦娥6号」の月試料には、採取地点の火山活動の歴史を記録した玄武岩が含まれるだけでなく、他の地域の非玄武岩質物質も混ざっていると説明。これらの試料は月の太古からの「メッセンジャー」のようなもので、初期の衝突史や裏側の火山活動、内部物質の組成を研究するための重要な一次資料を提供するという。

   「嫦娥6号」の月試料の組成はどのようになっているのか。

   今回の研究でチームは、「嫦娥6号」の月試料の密度が比較的低い、つまり多孔質で緩やかな構造をしていることを発見した。試料の粒子径分布は双峰型で、試料が異なる出どころの混合作用を経た可能性を示唆している。「嫦娥5号」の月試料と比較すると、「嫦娥6号」は斜長石の含有量が大幅に増加したが、カンラン石の含有量は著しく減少しており、この地域の月の土壌が明らかに非玄武岩質物質の影響を受けていることが分かる。

   研究の結果、「嫦娥6号」が採取した岩石片は主に玄武岩、角れき岩、泥質岩、淡色の岩石とガラス質物質で構成されていることが確認された。うち、玄武岩の細片は全体の30~40%を占め、角れき岩と泥質岩は玄武岩の細片、ビーズ状ガラス、ガラス片、少量の斜長石やノーライト(Norite)などの淡色の岩石の細片物質で構成されていることが判明。試料の出どころの複雑性がまた一つ解明された。

   鉱物学的分析によると、「嫦娥6号」の月試料の主な組成は、斜長石(32・6%)、輝石(33・3%)、ガラス(29・4%)だった。少量の斜方輝石も検出され、非玄武岩質物質の存在が示唆された。

   さらなる分析の結果、「嫦娥6号」の月試料には酸化アルミニウム(Al2O3)と酸化カルシウム(CaO)が多く含まれる一方、酸化鉄(FeO)の含有量は比較的少ないことが判明した。これは「月の海」と呼ばれる部分を組成する玄武岩と斜長石の混合物の特徴と一致している。また、試料中のトリウム(Th)、ウラン(U)、カリウム(K)などの微量元素の含有量は「クリープ玄武岩」より大幅に低く、アポロ計画や「嫦娥5号」ミッションで得られた月試料とは大きく異なっている。

「嫦娥6号」が採取した典型的な月試料の画像。(北京=新華社配信)

   上記の研究成果はこのほど、科学誌「ナショナル・サイエンス・レビュー(NSR)」に掲載された。

   李氏は「これらの発見は、月の裏側に関する研究史の空白を埋めるだけでなく、月の初期進化や月の裏側の火山活動と衝突の歴史を研究するための直接証拠を提供し、月の裏側と表側の地質学的な差異を理解するための新たな視点を開いてくれる」と述べた。

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