10日、自宅の中庭で機織りをする胡春芳さん。(保亭=新華社記者/陳凱姿)
【新華社海口2月28日】中国海南省の海南島には少数民族のリー族が代々暮らしている。地元のリー族女性が作り上げる織物「黎錦(リージン)」は、糸紡ぎから染め、織り、刺しゅうまでを一体化した世界で最も古い綿織物技術の一つとなっている。現時点では省内で唯一、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された項目で、紡織業の「生きた化石」と呼ばれている。
同省保亭リー族ミャオ族自治県の農村に住む胡春芳(こ・しゅんほう)さん(66)は、9歳で織物を習い始め、黎錦と生活を共にしてきた。地元では数少ない省級無形文化遺産プロジェクト伝承者でもある。現在も自ら綿花を栽培し、ウコンやリュウキュウアイなどを発酵させて染料を作り、着心地が良く、環境負荷が少なく、100年以上色あせることのない衣服を仕立てている。
2008年、農場で養豚とゴム園の管理を任されていた胡さんは、仕事の合間を利用して表裏両面が同じ文様の「双面織り」を初めて編み出した。その後、「双面織り」を携え、海南代表としてフランスなどに赴き、無形文化遺産関係の文化交流活動に参加。19年にはパリで展示された胡さんの作品の一つがユネスコの収蔵品となった。
海南省の政府部門はここ数年、リー族伝統織物の海外進出を継続的に推進している。リー族伝統の紡績・染色・製織・刺しゅう技術は19年、中国のユネスコ無形文化遺産の項目として、初めてフランス・パリのユネスコ本部で展示された。23年にはファッションの都、イタリア・ミラノで海南リー族文化展示交流イベントが行われた。(記者/陳凱姿)